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第62話 顔に?

「どうする? 膨らんでないで考えてみて」  笑いながら言う颯に、むむ、と考える。  そんなの、考えるまでもなくない?  「家出する。もう二度と颯に会わないとこに行く」 「……うん、まあ。……なんとなく予想通りっていうか」  クックッと笑いだす颯。 「許さないよな、絶対、慧。そうだと思った」 「番が何人もいるαと一緒にいるΩの気持ちなんか、絶対わかんないよ」  というか、それが許されている感じが、好きじゃない。  Ωだからって、番になるほど好きな人が、他の人とも番ってるなんて。絶対ほんとは無理なはず。 「オレ、αん時から、運命の番が好きな子だといいなって思ってたし。その子とずっと一緒に居たいなって思ってたから。オレがΩんなったって、変わんない」  颯を見つめながら、そう言ったら。  まっすぐにオレを見ていた颯は、ふ、と目を細めて、笑った。 「そういうとこ――――……」  手が頬に触れる。もうすでにすごく近いのに、鼻先が触れるほど引き寄せられる。 「綺麗で強いよな」  ちゅ、と鼻先にキスされた。 「オレが浮気なんかしたら、お前と居られなくなるのは分かるし」 「――――……」 「それ以前に、泣かせたくないから。信じてていいよ。オレのこと」 「――――……」  とか言っといて、しちゃう奴はいるんだぞー、きっと世の中、そういうこともあるんだぞー、と。ふざけてる時なら言ったけど。  まっすぐな颯の視線が。  優しくてまっすぐで、大好きだなと思ったので。  黙ったまま頷いたら、ますます笑む瞳。 「ああ、だからさ。飲み会とかの時、そういう心配はしなくていいよっつー話な?」 「――――……」  んん?  ……考えてること、また読まれてて、その話だったのか。  颯は、やっぱそういう力があるのではないだろうか。超すごいαの力か?? 「何でオレの考えてること分かるの? 颯」 「……ん、まあ……何でって」  くっくっ、と可笑しそうに笑いながら、ちゅ、ちゅ、と頬にキスしてくる。 「エスパーだから」  めちゃくちゃ楽しそうに笑う颯。  えっそう思ってるのもバレてるの?  顔にたくさんされるキスをちょっと避けながら、颯怖い、とむむ、と見上げる。 「……顔に出すぎって、言われたこと、ないか?」  クスクス笑う、颯に。  あれ? なんかそのセリフ、今日聞いたような?と、首を傾げる。

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