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第63話 歯形 ※

「んー……とにかく、颯が鋭いのは分かった」 「……まあ、それでいっか」  クスクス笑いながら、颯は後ろからまたオレを抱き締める。  ……わーなんか。すごく、背中が颯に密着。素面だと、これはもうヤバい。  かあっと……顔どころか、体まで、熱くなってくる気がする。 「なんか……うなじまで、真っ赤」  クスッと笑う声がして、ちゅ、とキスされたのが分かる。ひゃ、と声が出て、そのまま硬直。 「――――……番の証の歯形ってさ」 「……っっ」  びくびく、しながら、後ろを少しだけ振り返るけど。 「すげーそそる」  そのあたりをなめられた感覚。 「……っん……」  ひゃー……何それ、マジやめて、すごい、ゾクゾクする。  さっき、あんなにしたのに。何で。……反応しそう。 「や、だ」 「オレのって感じがして。……いいな、これ」  またちゅ、とキスされて。  びくん、と震えてしまった。 「――――……」  わーもう……また、オレ、フェロモン……。  ぎゅう、と目をつむって、固まってるオレに。  颯は「慧?」と呼びかけてくる。  なんか声の調子が違う。  なんかもうバレてるに違いない。  肩に触れられただけで、びく、と震える。 「――――……可愛いな、慧」 「ひゃ……!」  颯の手が、下に触れてきて。やだ、と言おうとしたら、もう片方の指先で胸に触れられて、びく、と上向いたところ、唇が触れて、重なる。 「んっ……ン、ん……ッ」  わぁ、なんか……っ急、に……。  一気に、気持ちよくさせられて、意味わかんないにもほどがある。 「……っふ、ぁっ……」  胸も、オレのも、ゾクゾクして、声が出そうなのに、口は深く塞がれてて、颯の舌が、オレの口の中、なめる。  ずるい、なんか、うますぎて、もう、されるがままとか……悔しい。 「……っぺん、に……」 「ん?」  首をちょっと振って唇を離して、颯をちょっと睨む。 「何?」  胸から手を離した颯の手が頬に触れて、オレの髪を掻き上げながら、後頭部に触れる。髪が濡れて、いつもと違う感じの颯に、じっと見つめられて、う、と言葉につまるけど。 「いっぺんに、しないで、よ」 「――――……」 「うますぎて、ムカつく……」  は、と息をつきながら、むむ、と睨むと。颯は、何秒か黙ってから。  まだ片手で触れたままだったオレのを、ぐり、と刺激した。止めることもできずにビクンと震えたところで、ちゅ、と唇にキスされる。 「慧はさ」 「……?」 「全身弱すぎ」 「……っっオレ、のせいじゃな……」 「ん? ……ああ、はいはい。オレのせい、な?」  クスクス笑って、舌が絡んでくる。 「――――……うますぎてとか言われると、もっとしてあげたくなるけど」 「……っ」 「わざと言ってる?」 「――――……っっ」  んな訳あるかー!  言う前に、「んな訳ねーよな」クスクス笑う颯の唇で、塞がれる。 「……んンっ……!!」    ――――……結局。  初めてお風呂場なんかでしてしまうという。  後ろから押さえられてとか、全部丸見えだし、超恥ずかしいし。  明日から一人でお風呂入ろう、と心に決めたオレだった。

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