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第73話 今日の報告
そこまで酔ってはないけど、ちょっとぽわぽわいい気分。
「少し酔ってる?」
あれ、バレてる。
「うん。気持ちイイ感じ」
「そか」
ふ、と笑う颯に、手を掴まれる。
「手ぇ、熱いな」
クスクス笑う颯の指はちょっとオレよりも冷たい。
すり、と撫でられて、手を繋いでると、気持ちいい。手を繋ぐの、嬉しい。
「何話してた? 楽しかった?」
「んー、なんかたくさん話したよ~。Ωってどんな感じかとか。色々」
「へえ?」
「ネットで調べるのとは違うね。なんかやっぱり、話せて良かった」
「そっか。良かったな」
「うん」
頷いて、あ、と思いついて、颯を見上げた。
「あ、そうだ。 あのね、フェロモンはダメだって。自分で出さないようにはできないんだって」
そう言ったら、颯は、ん、とオレをじっと見つめた。
「……それ、聞いたの?」
「うん、聞いた。何か、できることあるのかなぁと思って。例えばさ、集中したら、防げるとか。なんかこう……裏技みたいのないかなと思ったんだけど」
「……どうだって?」
「できないって」
「ん、そっか」
そう頷いてから、颯がふい、とオレと反対の方を向いて、なんか、逆の手で、口元に触れた。
「颯?」
「ん?」
「……笑ってる??」
「……んー」
諦めたみたいで、クスクス笑いながらこっちを向いて、オレを見て目を細める。
「できると思ってたのが、可愛くてさ」
「わかんないじゃん。できるかもしれないと思ったしさ。……ていうか、颯ってさ、ほんとよく、オレのこと可愛いって言うよね。全然良く分かんないんだけど」
首を傾げつつ、見上げると。
「慧って、オレからだけじゃなくて、なんか可愛いと思うけどな。可愛いって言われない?」
「…………」
……Ωになってから、よく言われるようになったような。
なぜ??
「今日、可愛いって言われなかったか?」
「……なんか言われた気もするけど、何の話の時かよく覚えてないや」
「ああ。言われたわけか……」
颯は、クスクス笑ってる。
「あっそうだ! 浮気とか、番、αは何人も作れるけど、Ωはできないって言ってたじゃん?」
「しにくいって言ったかな」
「うんうん。なんか、番以外のαの匂いがダメになるってだけで、相手がβとかなら、できるんだってー。なんか色々あるんだね?」
「――――……」
「……颯?」
なんか、颯が無言。
……?
「ぁ」
ぱ、と颯を改めて見上げる。
「しないよ? 浮気」
じー、と見つめると。
颯は、なんか、ちょっと、何か言いたげな顔で、頷く。
「……わー。ちょっと可愛い、颯」
繋いでた手を、くいくいと引っぱる。
「今の話やだった?」
「――――……嬉しくはないな。あと可愛いって……」
複雑そうな顔。ていうか、オレにはいっぱい言うくせに。
と思いながらも、やっぱり可愛くて。
周りをきょろきょろ。歩道前方には人影なし。
くいくい引いて、近づいた頬に、ちゅ、とキスした。
「――――……」
「しないよ、浮気なんて」
まっすぐ見上げて、笑顔で言ってみたら。
颯は、ふっと、優しい顔で微笑む。
こんなので、ちょっと、ヤキモチみたいの、妬いてくれるんだ。
と。なんかとっても嬉しい。
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