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第72話  Ω会議(?) 8 

「だって、なんか颯、すごく早いから」 「すぐ出られるようにしてたし。待ってると思ったから急いだけどな。まだ食べてた?」  クスクス笑う颯。 「あ。颯、アイス食べたい?」 「……ん」  あ、と口を開ける颯。スプーンですくって、一口。 「美味しい?」 「ん」 「もっと食べる? 颯も頼む?」 「一口でいい。食べていいよ」  そう言って笑んでから、颯は、三人に視線を向けた。 「どうも」  ふ、と。ちょっと余所行きの、笑み。  ――――……わー。……カッコいいんですけど。  皆は、それを向けられたせいなのか、もう、固まってる。   「あ、ちょっと食べててな?」 「ん」  オレが頷くと、ふ、と笑んでオレを見つめてから、颯が少し離れていく。なんか後ろ姿までカッコいいな。見送りながら。  ……アイス食べちゃお。と、ぱくぱくとアイスを口に入れたら。 「なになに、カッコいいんだけど」 「めちゃくちゃカッコいいんだけど。しかも優しいんだけど」 「ずっとあんな感じなのか?」  紗良と奈美と啓太が、何やら詰め寄ってくる。  うわわ。 「……ずっとあんな感じ。……んー……カッコいい、よね」  うん。と、ぽつり言って、頷きながら、アイスを食べ終わると。 「慧の口から、颯カッコいいとか、すげーびっくり」  啓太の声に苦笑い。「……だよねぇ……」と苦笑いを浮かべていると、颯が戻ってくるのが見える。 「あ、今の内緒ね、ハズイから!!」 「言えばいいのにー絶対可愛いってばー」  紗良がクスクス笑うけど、ぷるぷると拒否。 「慧、食べおわった?」 「うん」  椅子から降りて、颯の隣に立ちながら。 「あ、いくらだろ」 「いいよー、今度で」  そんな会話をしてたら。 「今払ってきた」 「え」 「なんか相談したんだろ?」  ふ、と笑って、颯が言う。 「あ、うん。そう、色々聞いてた」 「今日は奢りで」 「……いいの?」  オレが聞くと、颯は、ん、と頷く。  ぽけ、と見上げてる三人に、「いいって」と伝えると。 「ありがとね」  颯に言ったオレと一緒に、三人がそれぞれ、ごちそうさま、とか、お礼を言いながら、立ち上がる。一緒に店を出て、外で立ち止まる。 「じゃあ、皆ありがとね。またね」  バイバイ、と手を振って、皆と別れる。  颯と一緒に歩き出しながら、ふと振り返ると、まだ皆が居て、もう一度手を振ると、皆も振り返してくれる。 「颯、ありがと」 「ん?」 「……来てくれたのも。払ってくれたのも」 「んー……して当たり前な感じだから。別に礼はいらないけど」 「……当たり前なのか?」  そうなのか。  ……そういう相手には、今までもそうしてきたのかな。当たり前、かぁ。  カッコいいなぁ。そりゃ、皆、別れたくないよね。分かる気がする。さっき聞いたΩの女の子の話まで思い出してしまう。 「つか、慧、一人で帰すとか無理」 「え?」 「狙われたら困るし。奢ったのは、お前が世話になったと思ったからだし。当たり前だろ?」 「……オレ、狙われるかな??」 「可愛いから危ないし」 「……オレ、可愛い??」  颯たまに言うけど……。全然分からないので、ちょっと酔ってるのをいいことに聞いてみた。   すると。 「死ぬほど可愛いし」  肩に手が置かれて、颯に引き寄せられながら、そんな風に言われる。  急に近くなると、ふわっと、香る、颯の匂い。 「なんか酔ってると、余計可愛いよな」  かぁっと赤くなるオレの顔。  颯の目ってどうなってんだろ、と思いながらも。  ……だめだこれ。もう。  こういうのの免疫って、いつつくのかも聞いてくればよかった。 「早く帰って風呂はいろ」  はいろ。ていうのはお誘いだよね。  ……颯、濡れてると。カッコイイんだよなー……。ドキドキして死にそうになる。  あんまり見ないようにして、楽しくおしゃべりタイムしてるけど。  なんかもう。  ……颯が好きすぎて、困るな。オレ。 (2023/11/8)

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