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第129話 辞退希望

「え、それって、推薦人は誰ですか??」  オレの当然の質問に、委員の一人が決まりが悪そうに言った。 「……教えられないことになってて」 「えええ」  噓でしょ、なんでーと思ったオレの顔を見て、困ったように続ける。 「昔、もめごとがあったみたいで、他薦の人の名前は教えないことになってるんです。もちろん、本人が承諾の上の他薦は関係ないんですが……完全に他薦の場合は、ご本人に連絡して、参加するかお聞きして、参加するという意志表示をした時点で、普通に立候補の意味合いになりますしね。他薦とか自薦は、コンクールでは言わないですし」  なんか微妙なルールが多いけど、一つ確かなのは。 「じゃあ、断ります!」  断ればいいだけだな。うん!  速攻でそう言ったら、委員さん達、ええっと声を上げる。 「面白いじゃないですかー、夫夫対決。盛り上がりますよー?」 「……いやいやいや、それが嫌だから、オレは出ないって」 「えーもったいない……」  そりゃ実行委員的には、面白いんだろうけど。さっき颯が出るって言っただけで盛り上がるとか言ってた位だし……。 「もうちょっと考えてくださいよー」  口々にそう言われて、オレが困ってると、近くで笑ってた匠のことも見ながら、委員さんたちが口々に言う。 「三条さんももったいないですよ」 「いや、でもオレは」  とばっちりだとばかりに、匠がオレを見るけれど。そんなの助けてる暇は今は無い。 「匠はともかく、オレは颯と争うなんてやなんで」 「いやいや、こっちのが嫌ですよ」 「いやオレの方か絶対やだし」 「嫌さ加減で言ったらオレのが勝ってますよ。端から負けると分かってるやつに出るとか無理です」 「意味わかんない」 「先輩こそ、いいじゃないですか、夫婦でワンツーとかとったらカッコいいし」 「颯と戦うのがやなんだってばー」  匠と言い争っていると、とりあえず落ち着けと昴に突っ込まれた。 「三条さんも、神宮司慧さんも、出られることも考えてみてください! 辞退は、まだしばらく受け付けてますから大丈夫です。コンクールの二週間前になったら、ポスターでますので、それの前までなら」  楽しそうに続ける委員さん達に、オレは、断固として首を横に振った。 「いやいや、オレ、今辞退します」 「えええ」 「だって颯と戦いたくないし。オレは超応援するんだから、無理」  一ミリも、悩む隙すら無いので、超はっきりと言ったけど。  昴が、ちょっと唸った。 「誰が推薦したのか気になるよな……なんかさっき、推薦した奴に取り消してもらいたいって言ってたし――ちょっとこれ、持ち帰っていいですか?」  えええ、と困ってるオレをスルーして、昴が、委員さんたちにそう言った。

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