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第134話 愛されてきました?

 翌朝。学校到着。 「じゃあね、颯。また帰り」 「ああ。じゃあな」  授業の教室がある建物が違うので、そう言って手を振って別れて、今日は少し見送った。  かっこいいな。後ろ姿だけで。……歩き方、綺麗。モデルか? みたいな。  なんとなく微笑んでしまいながら、颯から視線を逸らして、教室のある建物に入って、階段を上る。  夜はほんとにめちゃくちゃ何度も好きって言って、颯と仲良くして、報告も無事済ませた。……うん。なんか、オレ達、とっても仲良しで過ごしているような気がする。まったくタイプは違うと思うんだけど、なんとなく相性はいい気がするんだよね。  まあ結局、誰が推薦したとかは、突き止めなくていいよねってことになった。颯は、別に自分からは行動は起こさないって。推薦は別にしちゃいけないことじゃないし、そんな大したことじゃないかなと。まあ、辞退できることだし。オレが辞退するって言えば終わることだから、そういう考え方で行くみたい。  ……そういう風に考えていると。ふっと思った。颯には言ってないけど。  もしかして美樹ちゃんが推薦したのなら。……張り合わせたかったのかなーとか。ちょっと波風立てたかったのかなあって、なんとなくちらっと、よぎった。違うかもしれないから、誰にも言わないけど。  颯のこと、大好きだったのに、振られちゃって、そのすぐ後に、αだったオレと結婚なんかしちゃってどうしようもなくなっちゃって。……それで、そうしたかったのかな。とか。辞退されるとかも、分かってたと思うけど、なんか、それ位しかできなかったんだとしたら、なんか……。  うう。ちょっと胸が痛い。  ……颯のことを好きな気持ちはすごく分かるし。  ずっと、昔から、颯の側に居て、ずっと好きだったのに、とか。うう、切ないな。……あれ? なんでもっと早く付き合わなかったんだろう。ずっと近くに居たなら、颯、申し込まれて嫌じゃなかったら付き合ってたっぽいし。高校の時とか、どうして、ただ側に居たんだろ。  大学に入ってやっと付き合ったみたいな感じだったのかな。  まあでも、過去のことだし、颯にも聞かないけど。  もちろん、全部ただの想像で。美樹ちゃんがオレのことをエントリーしてない可能性はあるんだけど。  ……つか、オレ、心の中と颯の前で、美樹ちゃんとか呼んでるけど、話したのはこないだのぶつかった時だけ。あれ話したって言わないしな。  美樹ちゃんとα……孝紀だっけ。あの二人が颯と話してないっていうのがちょっと気になるけど、まあ颯は動かないっていうから、もしそうだったとしても、気まずいのとかは、時間が解決するのかな。  そんな風に思いながら教室に入ると、昴がオレに気づいた。 「あ、おはよー」  皆がいるとこに近づくと。  昴と誠と健人が、またオレを見上げて苦笑する。 「え。何。また匂う??」  周りにいる他の皆には聞こえないように、三人に聞くと。 「まあまあ、さぞ熱い夜だったんだろうなーと」 「そうそう、そんな感じ」 「……お前ら、ほんと、いい加減にしろよな」  健人と誠が笑いながら。最後呆れたように昴の一言。 「え、何? わかんないけど」  さぞ熱い夜ってなんだよ、恥ずかしいから、マジやめて。と思ってると。 「フェロモンはつけてないよ、今日。颯は」  昴の言葉にそうだよねと頷くと、健人が「でも、お前が振りまいてる感がある」と苦笑。 「え、オレ、振りまいてる?? ヒートってこと?」 「ヒートじゃないのは分かるだろ。そうじゃなくて……」  なんて言うんだろうな、と健人が誠を見ると。 「んー、なんか、愛されてきました、みたいな顔してる」 「――――……っ」  もう絶対この三人はオレをからかって遊んでる。  と思うほど。真っ赤になったオレを見て、声を殺して笑ってる三人を、もうどうしてくれようかと思う。  ……どうもできないのだけど。くそー。  

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