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第152話 すごく執着してる

「それ位、あいつらは、もともと仲がいいんだよ。大学入って、美樹がオレに付き合って欲しいって言った時も……ほんとに付き合ってなかったんだな、とも思ったような……」 「――――……」  思わずしばらく言葉を失ってしまう。  可哀想……。  颯ってば。  ……はっ! ていうか……。 「颯と美樹ちゃんが付き合いだした時、孝紀はどうしてたの?」 「別に……変わらず、オレらと一緒に居たし。孝紀のオレに対する態度が変わったとかも無かった」 「あ、そっか。美樹ちゃんと颯が付き合いだした時、もう諦めようと思った、とか言ってた」 「……つか、孝紀、すごいよな」 「うん。すごい」 「美樹がオレを好きだと言ってようが、付き合ってようが。なんだかんだで、ずっと一緒に居て、見守ってるって……結構な執着」 「……ん? え。執着、なの?」  あれれ、すごい好きなんだなあ、なんて感動すら覚えてたオレと、なんか、颯のテンションはすこしちがうみたい。  オレの聞いた言葉に、少し考えた後、颯は苦笑した。 「執着、だろ。αで執着気質の典型的なタイプな気がするけど?」 「――――……」  そう言われて、そう思って考えてみると。  孝紀のめっちゃ爽やかな外見とは違う感じが、見えてくるような。  想い人のΩに好きな人がいようが、側に居続けて、好きで居続けて、彼氏ができても、諦めなきゃと言いつつ、ずっと居て――――……。  おお。……結構な執着か。な、なるほど。  美樹ちゃん、すごい大事に思われてて、このままあそこくっついたらいいなあとか思っていたけど。……なんか、何年もかけて、一番大事なポジションにいて、どんな時も優しくして。  ……ちょっと怖いのか?もしかして?  うーんうーんうーん??  オレが悩みながら、ご飯をずっとモグモグし続けていると、ぷは、と颯が可笑しそうに笑った。 「そんな、孝紀、危険なタイプじゃねえから。そこまで悩まなくて平気だよ」 「あ、……うん」 「大丈夫。もしあそこが付き合うなら、美樹は幸せだろうし。……美樹が他にまた好きな奴が出来ても、きっと孝紀は、身を引くんだろうなと、思う」 「……無理矢理、自分の方むかせる、とかは無いの?」  αならむしろそっちなんじゃないだろうかと思ったから聞いたのだけど、颯は少し首を傾げて、無いかな、と言った。 「するなら、オレの時にしてるんじゃねえの?」  ――――……うーん。どうだろ。  αの執着って言われても。オレ、αの時も、もともとそういうの無かったから、わからないなぁ。……あーでも、颯には執着してた?  いやどうだろ。あれは、「颯に勝つこと」に執着してたような……。  何が楽しかったんだか、あの頃のオレ。  ……颯がなんか、また来た、て顔してくれるのが、嬉しかったんだろうか。まあでも、孝紀の執着とは違うなあ。 「……颯は、分かる? 執着」 「――――……」  聞いてみると、颯はふっとオレをまっすぐ見つめた。 「今、すごく執着してるから、分かるよ」 「――――……」  今すごくしてる……っていうのは、もしや。  颯と見つめ合うと。颯の瞳がじっとオレを見て、優しく緩む。  ぼぼ、とまた顔の熱が、上がる。  ……聞くんじゃなかった。またハズイ。でもなんか嬉しい。  そっか。執着怖いっていっても、好きな人にされるのは、嬉しいからいいのか。

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