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第153話 ひそかに好き

「慧、ドレッシングいる?」 「いるーありがとうー」  サラダにかけてくれてる颯を見ながら、なんかほんとよく気が付くし、自然と動いてくれるというか。  ずっと颯の仲間と一緒に居て、話すようになって、分かったことがある。  颯を崇めまくって超崇拝なのかと思ってたら、そこまでじゃなかったみたいで。てか、当たり前か、同級生だし。普通に友達関係なのは分かったんだけど……でもやっぱり、颯は一目置かれてて、皆が認めてる気がする。  準備してるとたまに、これどうする?て考えることがある。これ困ったねーとか、そういう時、皆が颯を自然と見る。そうすると、颯が、こうする? と、何か言ってくれて、それが良さそうってことが多い。でもってほんと、いつもすんなりと、ことがうまく運んでく。  わぁー。魔法みたいだなぁ、颯。  オレは、なんだか内心、鼻高々。だってカッコいいんだもんな。  多分オレだったら、これどうするどうする??とか言って、わーわー言って、皆でわーわー意見だしあってからの決定。て感じだと思うんだけど。  もちろん、颯が言ったことに何か異論があったり、こっちの方がいいじゃん、ていう提案があれば、きっと皆もそれを言うだろうと思う。颯は、別に、これにしよう、て決めて言ってきてる訳じゃないし。でも、何だか、皆、颯の言う通りで動いて、結果それですごくうまくいってる。  颯のお父さんがすごいやり手らしいって噂を聞いたことがあったけど。颯のそういう感じが、お父さんから引き継いだものなら、なんかすごく納得って感じで、きっとそうなんだろうなって、オレは最近ずっと実感中。  周りになんだかやたらたくさんいる、上位αたちが、颯のことは特別視してる。  なんかもう。  そういうとこも、ものすごくかっこよくて、すっごく好き。とか、オレは密かに思っている。  孝紀は、相手が颯だから、挑まなかったんじゃないかなあ。多分他のαだったら、遠慮してなかったと思うんだよね。イケメンで有名とか言われてた匠だって、颯とは戦いたくない、とか。颯のフェロモン、怖いとか言ってたし。  匠、同じ学年の仲間たちの中では頼りにされてるし、多分、颯みたいな立ち位置な気がするんだけど。なぜかオレの周りに居ると、昴が匠で遊んでる感があって、ちょっと面白い……。 「颯、屋台さ」 「ん?」 「一緒にやれて、すっごく楽しいよね」  そう言うと、颯はオレをまっすぐ見つめて、そうだな、と頷く。 「オレと慧の友達が、混ざってんの、いいよな」 「うんうん!」 「……匠まで入ってきて、なんかよく分からない集まりだけどな」  苦笑する颯に、「オレもそう思う」と、笑ってしまうけれど。 「けど、皆バラバラなのに一緒で、なんか、すごく楽しいよね」 「そうだな」 「うん。ふふ。楽しいね。明日で準備終わっちゃうの、寂しいなぁ……」  と、ちょっと感傷に浸っていると。 「なんかバラバラでも、慧が居ると、和むのが、いいよな。ほんと、すごいなって思ってたよ」 「――――ん? どゆこと? オレで和む?」  首を傾げて聞き返すと、颯は、ふ、と微笑んだ。

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