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第154話 世界で一番

「慧の周りって、本気でαが多いよな」 「んー……そう、かもね」 「αって、オレがオレがって奴、結構多いと思うんだけど。慧が居ると和んでるっていうか」 「それ、オレの影響ある??」 「あるよ」  くす、と笑って、颯が頷く。 「自然とそうなってるだけだから、自覚無いかもだけどな」 「んー。ていうか、皆いい奴だから」  ふ、と笑ってそう言うと、颯は、そうだけど、と笑う。 「そういえば慧、少し前に言ってたろ」 「ん?」 「結婚式までには、オレの友達にも認めておいてほしいって」 「あ、うん、言ったね」  頷くと、颯は「もう大丈夫だと思うよ」と笑った。 「そう思う?」 「ん。思う」 「そっか。――――そしたら早く、結婚式、したいね」 「――――したい?」 「うん。したい」  即答すると、颯は、そうだな、と笑ってくれる。うんうん頷いてると、颯が立ち上がった。 「そろそろ片付けて風呂入ろ。明日早いし」 「うん。そだね」  オレも立ち上がって、一緒に片付けを開始。  ――――結婚当初。  急すぎて、ほんとにいきなり二人の生活が始まったから、家事とかも、オレは手探りだった。  一人暮らしを一年はしてたけど、正直そこまで自炊とかしてなかったし、洗濯も食器洗いも掃除も何もかも、全自動の機械にお任せしてたし。大体のとこ全部適当にしてた。  けど二人になったから、色々颯ルールを学んだりして。洗濯物の畳み方とか、冷蔵庫の中の定位置とか、いろいろ。なんか最初の頃は、オレ、結婚のままごとしてるみたいな。そんな感覚だったなーと、最近思う。遊んでるみたいな。色々照れながら、楽しみながら。  少し、慣れてきた。  颯と一緒に、家のことするの。  αとΩが結婚したら、なんとなく、Ωが家に居て、家事とかして子供産んで、っていうイメージがあったし。Ω関係なく、奥さんが家を守るって感じだと思うから、必然的にそうなるのかもなと思うんだけど。  今はオレ達、学生だし、颯は家のこと、全部手分けして一緒にしてくれるから。  家事も楽しいなーってずっと思ってる。  颯とするのは全部楽しい。    夕飯の片づけを終えて、一緒にお風呂。  この流れにも、大分慣れてきた。  ……けど、まだ恥ずかしいのだけど。颯の前で裸になるの。 「慧おいで」  洗い終えて湯船に入ると、腕を取られて、引き寄せられた。  後ろから、そっと抱き締められて、後ろを振り仰いだ。  すごい、ドキドキするし。  ……颯、カッコいいし。  オレの額が、颯の頬に触れる。そういう接触が、なんか嬉しい。  ちょっとドキドキしすぎるので、背中に軽くよりかかって、前を向く。 「慧さ」 「んー?」 「明日は朝から忙しいよな」 「うん。屋台の飾りとか、売り歩く宣伝のとか、色々作んなきゃ。颯は?」 「基本、慧と一緒にそこらへんにいるつもりだけど……明日明後日の分担も詰めないとな。コンテストの打ち合わせも途中で行ってくる」 「あ、そうなんだー。んー……ドキドキするねー」  そう言うと、颯はクスクス笑う。 「慧、ドキドキする?」 「うん。なんかもう、色んなとこに貼ってあるポスターをいっつも見ちゃって、すっごいドキドキしてる……」 「そっか」 「颯はドキドキしないの?」 「してないかな。早く終わんねえかなって思ってるけど。自分の顔があちこち飾ってあんのは、なんか落ち着かない」 「あれ、去年は? ドキドキした?」 「早く終われって思ってた」  クスクス笑いながら言う颯に、あは、と笑い返して、オレはくるっと颯を振り返った。 「なんかそういうの、颯っぽくて、カッコいいなー」  そう言うと、じっと見つめられて、ちゅ、と頬にキスされる。 「あんまり緊張とかないの?」 「そーかもな……」 「オレ、すっごくドキドキしてるー! あ、でもでも、颯が一位なのは絶対だと思ってるよ。だって、写真が一番キラキラしてるから」  そう言うと、颯は面白そうに笑って、「おなじとこで撮影したし、オレだけキラキラはしてないよ」なんて言うけど。  はて。  めちゃくちゃキラキラして見えてるんだけど。おかしいな、と首を傾げつつ。 「一位になってる颯を思い浮かべると、めちゃくちゃドキドキする」 「はは。気が早いドキドキだな?」 「ん! なんか色々ドキドキ。ステージの颯を見るのもだしー。後夜祭が楽しみすぎるから、もう屋台もめちゃくちゃ頑張るから」 「ん」  クスクス笑って、颯がオレを抱き寄せた。 「まあ……頑張るよ。慧の番として胸張れるように」 「ん?? あ、それは今も張ってくれていいよ?」  振り返りながら、カッコいい瞳がオレを見て緩むのを見ると。  世界で一番好きだもんな、なんて言葉が浮かんでしまう。         (2024/4/20)

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