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第155話 キスだけなのに ※

「……慧」  ……ん。この呼び方。  颯を見上げると、そういう視線な気が、する。  声で、分かるって。  ……オレがすごいんじゃなくて、颯が出す声が、熱っぽくなるのがすごいんじゃないだろうか。 「キスしていい?」 「……聞く?」 「のぼせちまうから、慧」  ふ、と笑う颯は、なんか、すぐ、色っぽくなる。  カッコよすぎて、胸がドキドキして。  ……ていうか、オレが断れる訳、無いし。  くるん、と前向きにされる。颯の上に座って。  密着。  それだけで――――なんか、体の中が、熱くなる。 「慧」  熱っぽい声で、呼ばれるだけで。   ドキドキ、する。 「颯……なんかね」 「ん……」  颯の手がオレの頬に触れて、ぼうっと見上げるオレを見つめ返す。 「……もうのぼせる」  言ったら、颯、ん?と首を傾げてから、ふ、と吹き出した。 「早すぎ」 「……だって、なんか……」 「キスも、してないし」  クッと笑って、オレの、前に落ちた前髪を掻き上げて、そのまま頭を撫でてくれる。 「……颯がそういう顔して、そういう触り方、するから」 「――――」  なんかもう顔、熱いし。体、熱いし。  ――――お湯のせいじゃない。  颯と向かい合って、あっという間だから。 「そういう顔って?」  笑みを含んだ優しい声が。なんか、とてもゆっくり、聞いてくる。  すり、と頬を撫でられて、もうなんか、それだけで、ぴく、と震える。  ちゅ、と頬にキスされる。  それだけで、ぞく、として、もっと熱くなる。 「……ぁ」  なんかやばいな、と思って少し開いた唇に、颯が唇を重ねてきた。  すぐに舌が、触れてきて、そのまま深く重なる。 「ん」  ゾクゾクする。何で、颯のキスって、こんなに気持ちいいんだろ。  たかが。唇が触って。舌が、触って。少し噛まれたり。  ……中、舐められたり、する、だけなのに――――……。 「ん、ふ……っ……」  ぢゅ、と舌の間で、音がする。  ――――……っ恥ずかしいのは、何度しても変わらないし。  その、音が。 「……ふ、ぁ」  聞こえると。  ……力が、抜ける。  ゾクゾクしすぎて、少し離れようとしてしまったら。  颯の手が、オレの項にかかって、引き寄せられてしまう。 「ん、む……」  ダメだ。無理。きもちい。  触れて。絡んで。噛まれて。舐められて。  それだけなのに……って、もう全然それだけじゃないし。  もう……。 「ん、ぅ、……は、や……ん、ン……」    ふは、と息を吸ってまたすぐ塞がれる。  酸欠と。気持ちいのと。  至近距離の颯の顔が、カッコよすぎて。  濡れて、落ちた前髪が。  色っぽい。なんかもう。今、オレの視界で写真が撮れるなら、撮って……。  売ったら、死ぬほど売れちゃうと思う……。  ……意味分かんね、オレ。  だめだ。 「……ん、ふっ……」  やっぱりもう、色気駄々洩れの颯には勝てず。  めちゃくちゃキスされて。  …………なんかもう、力抜けちゃって。    最後はすっかり、イかされて。一緒に。イって、くれたけど。  もうオレは、正直、ドロドロに……溶かされた、気分。  直接的に、下、触られるまでは、ほぼキスだけだったのに。  キスだけだった。のに。  全部、終わって、あがりまくった息が少しだけ落ち着いてから。 「慧、キスだけで、ものすごいトロンてするから、ほんとに可愛い」  颯に、めちゃくちゃクスクス笑われたけど。  ……笑いながらもめちゃくちゃよしよし抱き締められたので良しとした。 「のぼせた……」 「ん。……介抱してやるよ。とりあえず、おいで」  ふ、と笑って、颯に抱き締められる。 「息、収まったら出ような?」  耳元で囁かれると。  また熱がこみあげてきそう。  明日早いからって、最後まではシないって。  むー……。しょうがないけど。  …………残念。  もう、オレ。  ……颯が大好きすぎる……。  優しいキスも、優しい触れ方も、こうして抱き締められるのも。  ……めちゃくちゃ好きすぎて、困っちゃうくらいだな。もう。

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