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第165話 学祭1日目

 昨夜も朝も、なんかもうオレは絶対、溶けかかってる。  もう颯のことが好きすぎて、何を言われても、どうされても、なんかもう、なんでもいいって思っちゃうくらい、好きなのかもしれない。って、こんなこと考えてる時点で、頭溶け溶けな気がする。うーん。  オレが颯を好きって思う時に考えてること、颯に言ったら、ちょっと気持ち悪がられてしまうかもしれない……。  などと、自分でもアホだと思うのだけど、どうしてもそう思ってしまいながら、颯と学校まで歩いてきた。  途中でバラバラと仲間たちが合流。屋台の仕上げと、運んできた材料とかを配置したり。学祭開始三十分前、一回、皆で集まった。  颯を前にして、皆が集まる。なんか、高校までは結構団体で色々やってたけど、大学に入ってからはあんまりこういう機会、無かったから。結構な人数でひとつのことを作ってきたの、久しぶりで。これから、学祭始まるって思うと、すごいワクワクする。  皆もなんだかワクワクした顔で、颯に視線を向けている。 「ずっと、色々準備お疲れ。朝から野菜切ってきた皆も、お疲れさま」    皆、颯の言葉に、頷いてる。 「思ったより大変だったけど、結構楽しかったよな」  ふ、と笑う颯に、皆も嬉しそうに笑うし、「楽しかったー!」と声をあげる奴もいるし。 「火を使うから、やけど注意して。店の当番や売り子の担当の時間は確認。交代の時間はちゃんと守ること。担当時間以外は手伝ってても良いし、祭りそれぞれ楽しんでもいいし、好きにしていいから。一日目は、ダンスクラブやバンドのコンサートなんかもあるし。楽しんで」  はーい、と口々に皆が返事。 「それぞれのグループのリーダーから何かある?」  颯が、オレや匠、孝紀に聞いてくるけど。  今、颯、全部言ってくれたしなあ、と三人顔を見合わせて、ふ、と笑った。 「楽しんでやろうー!」  オレがそう言ったら、皆が、わっと騒いで、色々返してくれる。 「あ! あと、イケメンコンテストの応援お願いしまーす」  気づいて追加したら、どっと笑われたけど。  颯が苦笑しながらオレを見てから、改めて皆を見回した。 「まあ、お金のやりとり気を付けて、怪我無く、楽しく、だな」 「はーい!!」 「じゃあ準備、仕上げて」  ぱんぱん、と颯が手を叩くて、はーい、と皆が動き出した。  うーん。颯。カッコよすぎる。  ほくほくしながら、準備をしようと振り返ったら。 「――――……」  何だか、匠が、少し離れたとこにいる颯を、じっと見てる。 「……どしたの? 匠」  あ、と気づいたように、オレを見て、いえ、と苦笑。 「カッコよくて見惚れちゃった? ダメだよ、あげないからね」  冗談八割くらいで、笑いながら言ったら、「いらないです」と即答。  そんなに激しくいらないって言われるとそれはそれで嫌、と言いながらオレが膨れてると。 「ずっとあの人って、あんな感じですか」 「……あんな感じって? 颯?」 「……リーダーっぽい、というか。皆がついてくみたいな」 「……まあ高校ん時のオレは、ついてってなかったけど……」  はは、と笑いつつ。 「でも、あんな感じかなぁ。逆らえないでしょ、なんか」 「――――……」  なんか、ちょっと……というか、結構、不満そう。  ……?? あー、そっか。なんか張り合いたいのかなあ。 やっぱり、匠は「一番」が好きみたいだし。αの特性、強そうだしなぁ。家もいいとこらしいし、上に立たないといけないのかな。  ふむふむ、大変だなー、なんて思って。 「ていうか、匠も、ちゃんとリーダーじゃん?」  そう言うと、匠がオレをふ、と見つめた。 「ちゃんとグループでまとめてるじゃん」 「…………そうですか?」  あ。ちょっと浮上した? 「うん。ちゃんとしてる。すごいと思うよ」 「――――……」  じっと見つめられてるので、うんうん、と頷いてると。  匠は、少し考えてる風に自分の顎に触れた後。  ふ、と嬉しそうに笑った。  お。匠って単純。こういうとこ、年下っぽくて、可愛いよなー。  オレもつられて、ふふ、と笑ってしまう。

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