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第168話 ラブコメ?

「はは。真っ赤」  孝紀に面白そうに見られてますます恥ずかしい。   「か。からかうなよっ」  ただでさえさっきから、なんか、頭ン中、颯のことしかないんだから。  ……ていうか、さっきっていうか、朝っていうか、昨夜……いやもう、ずっとなんじゃないかって、そんな感じがするけど。 「あ、オレ、からかってるんじゃないよ。あんな風に笑う颯が見れて、なんかオレはすごく嬉しいというか……。まあ笑うのとか普通に見るんだけどさ。なんかそういうんじゃなくて……颯って、αの中でも常にトップで一目置かれてるしさ。自然と気ぃ抜かないように生きてたんじゃないかなって……なんかお前と居るの見てたら……緩いなぁって思って。慧と居る時の、颯の顔。だから好きなのかなって、ずっと、思ってた」  ……そうなんだ。緩いだろうか。超絶、カッコいいままなんだけど。  緩んでる??  「なんか、優しい顔してるから、びっくりする」 「……颯は、優しいけどね、ずっと」  思わず、そう言ってしまったら、孝紀は、オレを見て、ぷ、と笑った。 「颯が優しくないなんて言ってないよ、そこ引っかかったの?」  クスクス笑われて、また余計な恥ずかしいこと言ったなと、焦ってると。 「冷たいわけじゃないし、人と絡まないとかじゃないし。ちゃんと慕われてる感はある奴だけどさ……でもなんか。さっきキスした時は……ほんと緩んでて、なんか感動」  感動って……と笑ってしまいそうになるけど。  孝紀って、颯のこと、好きなんだなあ。……美樹ちゃんのこと、色々思うことあっただろうに。良い奴だなぁ。うんうん。敢えて美樹ちゃんのことは言わなくていいだろうと思って、自分の中でだけ考えて、良い奴、とほくほくしていたら少し気になった。  ……美樹ちゃんと孝紀はどうなってるんだろ。  一緒に準備するようになって、一緒のところを見てると、もう付き合ってるんじゃないのかなと思うくらい、二人だけの世界、みたいな雰囲気もすごくあるんだけど……。そういえば美樹ちゃんて、もう颯のことは諦められそうって言ってたけど、その後は全然聞いてないんだよな。  颯とも普通に話してるの見るし、オレとも、最近ほんと、仲良くなってるし。もう吹っ切れたのかなぁ、と思っていると。 「まあでも、あれは美樹が見てなくて良かったかなとは思うかなぁ」  ぽそ、と孝紀が言う。あ。それ……今もそうなの?? と聞こうかやめようか、思った瞬間。 「もー」  と、明るい声がすぐそばで聞こえてきた。   あ。美樹ちゃんだ。タイミングいいのか悪いのか、良く分かんないけど。 「孝紀、私、もう平気だってば」  しまった、みたいな顔して、孝紀がうんうん頷いている。 「颯のキスの話聞いて、慧くんにツッコミに来たんだけど……何の話してるのかと思ったら、私の話って」  まったくもう、と美樹ちゃんはぷんぷん怒ってる。 「慧くん、私もう、ちゃんと吹っ切ってるからね」 「あ、うん」  おっきな瞳にじいっと見つめられて、オレは、コクコクと頷いた。  ……うん、多分。そうだよね。そんな気がする。  あの時話したことで、美樹ちゃんの中は、落ち着いてる気がする。  ……むしろ気にしてんのは、孝紀じゃないかな。  あの時、孝紀も「美樹も諦められそう」とか言ってたのに、やっぱり大好きな人のことって、ちゃんと分かんないものなのかな。 「もうほんと、孝紀てば……」  むむ、としながら、慧くんあとでまた来るね、と離れていった美樹ちゃんを、孝紀が追いかけていく。  あそこ、もうちょっとで付き合うんじゃないかなーと思うのに。  なんとなく、後ろ姿を眺めていると。 「つか、あちこちでラブコメしないでほしいですよね」  さっきから何か不機嫌な匠がそう言うと、横に居た昴は。 「こっちでコメディにしてんのは、お前な?」 「はー??? もーほんと、先輩、嫌いですね」 「先輩に向かって嫌いとかいう奴いる?」 「昴先輩は特別です」 「そんな特別いらねーし」  ……なんだか良く分かんないけど、面白い会話をしてる二人を見守ってしまう。なんか、この二人はコメディぽいなぁ。ぷぷ、と笑ってると、「ていうか全然分かってないこの人が一番コメディですけど」と匠が言ってくる。それオレに言ってる? と首を傾げると、昴が、ふ、と口元押さえながら笑ってる。 「何それ? なんで笑ってんの、昴」  んー? と首を傾げていると、昴が、もうすぐ開始時間だな。と話をはぐらかす。むー、と思うけど、開始より早くもう、遊びに来てる人達もだんだん歩き出していて、もうすぐ始まるなーと、わくわく。  あとで颯とお祭りまわろうって言ってくれた。  楽しみすぎる。それまで、がんばろうっと。

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