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第174話 デフォルトで

 たこ焼きと唐揚げとミニドーナツとドリンクを買って、特設のテーブルに座った。 「うまー」  たこ焼きを頬張ると、颯がオレを見て、笑う。 「慧、たこ焼き、似合う」 「え。そう?」  どういう意味? と思うけど、優しく見つめられてるので、多分いい意味なんだろうと解釈して頷きながら。ふと。 「颯は、なんか似合わないかも……でも食べて」  クスクス笑ってしまいながら、はい、あーん、と颯の口に、たこ焼きを運ぶ。 「似合わないか?」 「うん。颯は、おしゃれな食べ物が似合う」 「おしゃれな食べ物って?」 「んーーー。なんだろ。あー、屋台とかじゃなくて、前に連れていってくれた、夜景が綺麗なレストランとか。ああいうのは似合うなーって思う」  ふふ、と笑ってしまいながら言って、でも、と続ける。 「一応オレもαだったし、そういうとこも縁はあったけど……」 「一応じゃなかっただろ?」  クスクス笑った颯に突っ込まれて、「そうだけど」と笑いつつ。 「オレはむしろこういう方が楽で」  そう言うと、ふ、と笑ってから、颯はオレをじっと見つめる。  「オレが慧に言った、似合うっていうのはさ。そういう雰囲気的なことじゃなくて……」 「うん? なくて?」  じっと見つめ返してると。 「たこ焼き、口に入れて、丸くなってるのが可愛いって意味で言った」    ふ、と瞳をきらめかせながら言って、オレの頬に、触れる。 「――――……」  ごほ。変に飲み込んで、ごほごほし出したオレに苦笑して、颯がお茶の蓋を取って、渡してくれる。 「……っけほけほ……」 「むせた?」  クスクス笑いながら、颯がオレを見つめる。  ……瞳がキラキラして見えるのは、オレが好きすぎるからなんだろうか。  他の人から見たら、どう見えてるのかな。ちょっと、今度他の人にも聞いてみよ。昴たちはやめとこ、絶対笑われるから。 「颯、顔熱いから……」  せき込むのを止めつつ、顔、パタパタしてると、颯はクスクス笑う。  やっと収まってから、オレは、「あ、でも」と、颯を見つめた。 「昔は、ほんとに、颯はそんな感じって、思ってたんだよね」 「ん」 「でも、思ってたより、普通だった……って言い方、変だよね! えーっと……違う、全然、颯、普通じゃないんだけどって、変な意味じゃなくて……」 「大丈夫だから。落ち着け、慧」  クックッと笑いながら、颯がオレを面白そうに見つめてる。 「……えーと。なんか颯、完璧すぎ、みたいに思ってて、負けるもんかーって思ってたんだけど……今は」 「ん。今は?」 「……今は、なんか、オレと一緒に、生きてくれる人? ……というか。色んなこと、一緒にやってくれる人、というか……?」 「――――……」 「……って、オレ何言ってるか、よく分かんないね……」  苦笑したオレに、ふーん、とますます面白そうに笑って、颯は、頷いた。 「ていうか、当たり前。……なんでも一緒にやるし。慧とずっと生きてくし」 「――――……うん」  正直、自分が何言ってるか、良く分かんなくなってたけど。  ……でも、颯がなんだか嬉しそうに笑ってくれてるから。  ま、いっか。と思いながら、頷いていると。 「ほら、慧」 「ん」  ぱく。颯の持ってる爪楊枝の先の唐揚げに、食いつく。 「……こういうとこで食べると、なんかほんとに美味しいよねぇ」  颯に食べさせてもらっちゃってるし。ああ。楽しい。  ……なんか、相変わらず、すごく、視線が飛んできてる雰囲気はあるのだけれど。颯が、目立ちすぎるんだよぅ。あと、多分、ポスターもいっぱい貼ってあるから、皆、「あっ」てなるんだと思う……。  ……気にしない気にしない。  オレは颯とのデートを楽しむんだー!なんて内心、頑張って思いながら、「美味しいね」と、しみじみ言ったオレに、「そーだな」と、クスクス笑って、颯も一つ唐揚げを口に入れる。  「おいしい?」そう聞くと。「ん」と笑ってくれる。別にオレが作ったんじゃないけど。颯が一緒に食べて笑ってくれるだけで、なんか嬉しいし、幸せとか。  オレってば、かなり重症だよなあ。  ……キュンキュンするのは、もういつでも。デフォルトばりに、いつもしてる。ほんと、オレの心臓、頑張って動いてねと、かなり本気で、応援。

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