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第175話 緊張……

 自分の心臓への応援なんて、変なことを考えながら、テーブルに置いてたパンフレットを見ていて、ふと気付く。 「そういえば、颯のチェス部は? 学祭で、何かしてないの?」 「ああ、かき氷、やってるよ」 「かき氷なんだ。颯、そっちはいいの? 手伝わなくて」 「こっちが先に決まってたから、イケメンコンテスト頑張ってくれればいいってさ」  苦笑して言う颯に、そっか、と笑いながら。 「ていうか、チェスを使って何かは、しないんだね?」 「前までは、教室借りて、チェス体験しませんかーってやってたらしいけど」 「うん」 「チェスをできる人が居ないのか、学祭まで来てチェスやりたくないのか、とにかくほとんど誰も来ないんだってさ」 「……たしかに。どっちもあるかも……オレ、チェスは触る機会も無かったなあ……」 「まあ。そうだよな」   二人で苦笑しあってしまう。 「颯は強いの?」  強そうだけど、と思いながら聞くと、颯は、ふ、と微笑んだ。 「弱そうに見える?」 「……見えません」  ちょっと悪戯っぽく笑う、ちょっと強気な感じの視線が。  ……ひたすらカッコいいな。この人は、ほんとに。  と思いながら、あほなこと聞いた、と反省しつつ、たこ焼きを食べ続けていると。 「ほんと、慧、たこ焼き似合うな」 「……んー、それ、喜ぶとこなの?」 「可愛いってことだけど」  くす、と笑う瞳が優しすぎる。  なんかまわり中、人がたくさんで結構騒がしいのに、たまに、颯しか見えなくなって、颯の声しか聞こえなくなるとか。不思議すぎる。 「えっと……あ、チェス、学祭でやらないのは分かったけど……それで何でかき氷になったの?」 「焼くのとか熱いから、氷削って、液かけるだけなら楽、だって」 「なるほど……」  なんか面白い。  チェスのクラブの、颯の先輩たち……。なんか、頭良さそうな気がする……。どんな感じなんだろう~?? 「颯、お客さんで買いに行ってみる? かき氷」 「ああ。いいよ」  くす、と颯が笑う。 「後で、連れて行こうと思ってた」 「ん??」 「慧、紹介しとこうと思ってたんだよ。先輩達、会いたがってたし。でもあの人たち、なかなかまとまって学校に居ないからさ。今日、ちょうどいい」  クスクス笑う颯。 「えっ。オレに会いたがってたの??」 「うん。ほら、コンテストの推薦、先輩らがやろうとしてたから、今年は、慧に頼むからって言ったら、嫁が旦那を推薦ー? って、なんかやたら盛り上がって。まあ、もともと結婚するって言った時もすごい驚かれて、運命だったって言った時も、死ぬほど驚かれて…… もともと、そこらへんから会ってみたいとは、ずっと言われてたからさ」 「へぇ……」  そんなに、たくさん、颯は颯の先輩達に、オレのこと、ちゃんと話してくれてたんだなぁ、と思うと。嬉しい。  嬉しいけど。 「なんか緊張してきた」 「え?」 「ドキドキしてきた」 「大丈夫だよ。ちょっと顔見せるだけだし」  颯は、オレを見て、冗談だと思ってるのか、クスクス笑っているけれど。  軽い気持ちで、かき氷食べたい、ついでに、どんな先輩たちか見てみたいし、颯も顔は出しといたほうがいいんじゃないのかな~程度だったので。  颯の先輩に紹介されてしまう、と。しかももともと見たいって言われてたとか。わー、なんか品定めされちゃうとか……?? 優秀な後輩αと急に結婚した、元αのΩ……。うーん、なんかすっごく、ドキドキ。  颯の先輩か。しかも頭良さそうな部の。  強敵かもしれない。  なんかすっごくパリッとしたシャツ着てて、すっごく冷静な感じとか?  眼鏡かけてる??  うーんうーん。  ……人に会うのにドキドキするなんて、いまだかつて無いかも。  

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