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第187話 百面相?

 ふっと目が覚めた。  カーテンから零れる白い光。いい天気そう。良かった。  昨日の学祭の色々を思い出して、楽しかったなと微笑んでしまう。今日もお店頑張って、そしたら、後夜祭で、イケメンコンテストだ。  ……イケメンコンテストって、何するんだろ。  ステージに上がるって言ってたから……インタビューとか?? 一発芸とか? カッコいいこと、何か、するのかなあ。  去年は見なかったし、あんまり考えてなかったけど、スーツを着てステージに上がって、何もしないってことはないよな。  全然分かんないや。……楽しみ。ドキドキだけど。  目の前にある、颯の顔をじっと見つめる。  ――――綺麗。このまま何時間でも、見つめていられそうな気がする。  寝ててもカッコいいなあ。  じーーー。  颯の方が早く起きることが多いから、寝顔は貴重。  ……睫毛長いなあ。瞳閉じてても、カッコいい。唇も、綺麗。  でもやっぱり、寝てると、強烈な圧みたいなのは無いかも。  瞳かなあ、やっぱり。  圧倒的に、強烈に、もう、視線を逸らせなくなる、みたいな。  ……大好きすぎて。  でもかっこいいけど、寝てると、なんか可愛い。  ふふふ。顔が綻ぶ。  そーっと手を動かして、そーーーっと、ぷに、と頬に触れる。 そういえば、颯ってよくオレの頬に触れるけど、オレからはあんまり触ってないかも! ぷに、とつまんでみる。もちろん、すっごくそうっと。  やわらかい。  ……んー。なんかキュンキュンするな。やばい。  もうものすごくそーっと動いて、近づいて、颯の頬をすりすり撫でて、ちゅ、とキスする。  わー。なんか、もう、すごく好き。どうしよう。  これ以上は起きちゃいそうなので自重して、至近距離でじっと見つめる。  寝てると、やっぱり少し幼い感じもして、可愛いなと思ったら。  ふと、出会った頃の颯を思い出した。中一の時だ。  今思い出してみたらすっごく可愛かった気がするのだけど。あの時のオレは、颯のことを、カッコいいなと思った。で。だからこそ、こいつには負けないぞーって対抗意識を燃やして……。  ――昴も言ってたけど。オレ、うるさかったと思うんだよなあ。ちょこちょこ絡みに行って……ほんとなにしてたんだろ。うーん……。眉を寄せて、悩んでしまう。  あの後、お互いαって分かったのも確か、同じ頃で……まあαやΩの多い家系の子が集まってるから、どっちも何人も居たんだけど。  他に居るαだって、結構イケてる感じの奴ら多かったし、勉強とか運動とか、出来る奴も多かったのに、そいつらとは結構仲良くて、全然張り合いもしなくて……颯だけ。  まあ、多分、周りの評価が、颯がすごく良かったのを、あの頃のオレは肌で感じてて……多分それで、負けないってなってた……のかな。  なんであんなに、燃えていたのかは、今のオレからしても大分、謎だ。  大学になって、張り合うのやめて。……ちょっとは大人になってたのか……?  そしたら体調悪くなって……颯が来て……変性だって、颯に言われて。  そのままこの家に、来て、即、番になるとか。  ――――……何か改めて、颯って、すごいな。  あのうるさかったオレを、ウザがらずに、良く思ってくれてて、でもって、しばらく関わってなかったあの日に、あんな形で、番として受け入れてくれるって。  出会いからずっとを思い出してきただけでも、颯がすごいとしか……。  その後も、家族にちゃんと挨拶してくれたり、観覧車で指輪くれたり、オレの友達と飲みに行ってくれたり。言うこともすることも。好きなとこしか無い。  そう思いながら、うんうん、とちいさく頷きながら、そっと手を動かして、自分の薬指を見つめる。  裏に文字が刻印されたこの指輪も。  ……絶対、一生つけてるもんね、オレ。  ふ、と顔が綻んだ瞬間。突然。 「ふ。」  空気が零れるような――――……??  ん? 笑った??  自分の指から視線をあげて、颯の顔を見上げると。  颯が口を手で覆いながら、オレを見つめて笑ってる。 「颯……?」 「あーごめん……我慢できなくて」  颯に、ぎゅっと抱き締められて、オレは、? がいっぱい。 「え? 何? いつ起きたの?」  すっぽり埋まった胸から顔を起こして、颯を見上げると、颯は、ぷに、とオレの頬を摘まむ。 「こうやって、慧が触ったあたりから」 「えっ」 「なんか、キスしたり、可愛いなーと寝た振りしてたら、急に静かになって。少し目を開けたら、オレのことは見てなくてさ。しかめっ面し出したなーと思ったら、ニコニコしだして、指輪見つめて笑ってるし」 「……っ見てたの?」 「顔のすぐ下で、百面相されたら見るよな」 「……っ起きてるって言ってよー!!」  真っ赤になった自分が、すごく分かる。  はずかしいよね、これ……っ! 「なあ、慧? 今何考えてたのか、聞いていい?」 「やだやだ! そういう、寝た振りとかやめてほしい……」  枕に抱き付いて埋まって、冷たい感触に頬を冷やしているのだけど、颯は、もう楽しそうに、笑ってる気配がする。  もー!!! 百面相してたつもりないけど、颯が今言ったのは、そのまんま、その気持ちだった時だから、ほんとにそういう顔してたんだなと思ったら……!  もーもー、すっげーハズイ!!

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