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第188話 のろけ

 朝の開店準備中。  オレが朝のことを思い出して、はー、と息をついてたら、昴にどうしたのか聞かれた。寝てる颯を見ながら一人で色々考えてたら、実は起きてて百面相とか言われてすごい恥ずかしかったと、超省略しつつ訴えると「アホらしい」と苦笑された。 「なんだよ、アホらしいって」 「朝からのろけてないで、忙しいんだから、さっさと準備」  ……のろけ。なのか、これ? 別にキスしたとかそういうのは言ってないんだけど。  首を傾げてると、昴がオレを見つめた。 「イケメンコンテスト、いよいよだな」 「うん、そだね」  頷いてると、周りに居た皆も、オレに視線を向けてくる。 「旦那が優勝候補とかって、どんな気分?」 「……えー。どういう……嬉しい、かなあ?」  そこに居た皆に笑いながら聞かれて、そう言うしかない。  まあ、自分の旦那が優勝候補ってことは……颯がカッコいいって認められてるってことだし。もちろん嬉しい。  ……ていうか、絶対的にカッコイイのは、もう分かってるんだけど。  でも、なんだか、ドキドキする。  自分がコンテストに出る時よりももっと緊張してる気がする。 「あ、そういえばコンテストってさ、実際ステージで何するか知ってる? 去年見た?」 「見たけどいまいち覚えてないな。インタビューはしてたけど」 「その場で、何を答えるかで、カッコよさも競うもんな」  その言葉に、うんうん頷きながら、「やっぱりそうなんだ」と頷く。 「まあ、でも、颯は何言っててもカッコいいから、そこは大丈夫そうだけど……あっ、あと、今日スーツ着るんだって、もう絶対一番めちゃくちゃ似合うよね。スーツ着てただけで、優勝な気がするけど。んー……でもやっぱりドキドキはする……」  んーどうしよう、夕方までずっとそわそわしてそう、とか考えていると、皆がオレをじっと見つめてるのに気づいた。 「ん? なに?」  皆を見つめ返して聞くと、ぷは、と笑われた。「なんだよ??」と眉を顰めると。 「慧って、それが通常だもんなぁ」 「ほんと。普通、旦那のこと、そんな風に言う?」 「え」  だって、カッコいいじゃん。と言いそうになって、ますます墓穴っぽいので、ちょっと自制したのだけど。 「だからお前が、颯のこと話す時って、全部のろけにしか聞こえないから」  昴が苦笑いでそんな風に言ってくると、ますます恥ずかしくなったその時。「慧」と呼ぶ声がして振り返ると、孝紀と匠と一緒に、颯が近づいてきた。 「あ、颯」  隣に立った颯に、不自然にならないようにちょっと俯く。顔が赤いのはバレてないバレてないと思ったら。 「なんで先輩、顔赤いの?」  匠がめざとく突っ込んでくる。もー! 「旦那さんが隣に来たくらいで、赤くなるとか、マジでやめようよ」  しかも、それはまたそれでちょっと違うし! もーもー!!!  ほんと嫌、おまえ。  むっとして見せてると、さっきからオレと居て、事情を知ってる皆は、可笑しそうにクスクス笑ってて。  颯は、ん? とオレを見下ろして、オレと目が合うと、ふ、と目を細めた。  ……こういう話してたら、こう言われて赤くなってたところに颯がきて、匠が勘違いしてるんだよう。  と、言いたい気持ちもなくはないのだけれど。  颯は、そんなのなんでもよいって感じで、ただ、優しく笑うから。  なんかオレも、なんでもいいやと、思って、颯に笑い返した。    

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