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第193話 顔を引き締める…
色々打ち合わせして、実行委員会の部屋を出た。
もうオレ、すごいご機嫌になってる。
だって、ほぼオレの中では、颯が優勝って決まってるから、絶対颯に花束渡せるって、思ってるし。
えー、そんな幸せなこと、ある?
颯の推薦させてもらえたし、でもって、颯が優勝したら、花束を渡して、おめでとうって言えちゃうんだよ。
しかも、颯も、「推薦者じゃだめ?」とか言ってくれてたとか、それを知った上で、颯が喜んでくれること、分かった上での、サプライズ花束ー!
嬉しすぎるんだけど。
どうしよう。なんか、ニコニコしてしまう。顔が。
顔を引き締めつつ、屋台のところに戻った。相変わらず、行列。颯はまだ売り子から戻ってきてないみたい。
マジですごいな。すごい売り上げ出てそうな気がする。なんだかんだ言って、材料費って、安いもんね。しかも屋台は颯が借りてくれちゃったから。ほんとならそういうところで、経費として結構お金がかかるんだろうけど。
「ただいまー」
焼きそばを焼いてる昴に声をかけた瞬間。ちらっと振り返られて、ちょっと顔を見つめられた。昴がくいくい、とオレを手招きするので、近づくと。
「話、何だった? なんか嬉しいこと?」
と、こそこそと聞かれた。
「――え。な、なんで? そ、んなことないけど」
「――――」
すっとぼけてみたけど、昴は眉を寄せて、「それで隠してるつもりなら笑う」とか言う。なんかもう脱力してしまう。
「――……何で分かるんだよ、オレ今、そこで顔引き締めてきたんだけど」
「ただいまーの声が、浮かれてるし」
「そんなことないし。超普通だったよね?」
「普通だったら、オレがこんなこと言ってるはずないだろ。何、オレの勘違いで、嬉しい話じゃなかったなら、謝ってやるけど?」
――――くーー。
絶対、謝るつもりなんかない聞き方。はー、ほんと、昴ってもう……!!
「……内緒だかんな」
「……オレにそれ、言う? 自分に言えよ」
呆れたように言われて、く、と悔しがっていると。
「で、何だったんだよ?」
苦笑しながら先を促されて、むむ、と眉を顰めながら、昴を見つめて。
「――颯が優勝したら、オレが花束渡すことになった」
「ああ、なるほど」
そう言って頷くと、こそこそと告げたオレから離れて、焼きそばをパックに詰め始める。「ふた閉めて?」と言われて、輪ゴムをかけて積み始めると。
「それ、嬉しい話、だよな?」
そんな風に言われて、クッと笑われる。
「――これ、実行委員の人達と相談して、サプライズだから。黙っててね?」
「オレが言うわけないだろ。――だから、お前、それは自分に言えって」
「オレだって言う訳ないじゃん!」
「お前は顔が言ってるし。何なら、ただいま、だけで、なんか訴えてきてるから。ほんと、サプライズとか出来ない奴だよなー。まあ、もう、もっともっと、心して、顔引き締めろ。今のじゃまったく引き締まってねーから」
「……もー、なんでそんな昴はムカつくんだよ!」
昴の腕を掴んで、ゆさゆさ揺すると。
「バカ、焼きそばこぼれるわ」
「昴が悪いんじゃんか!!」
「何でオレが悪いんだよ、どっちかって言ったら、悪いのはお前だろ」
「何でオレが悪いんだよ!」
ゆさゆさ揺するオレと、剥がそうとしてる昴を見て、周りの奴らが、ほんと仲イイねとか言って、なんか笑ってるけど。
そんな微笑ましいものじゃないんだけど。
はームカつく!
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