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第198話 おみおくり

 屋台に戻ると、もう売り切れたみたいで、看板を下ろしているところだった。片付けに混ざって、しばらく。屋台は引き取りの人を呼んでいたので持って帰ってもらい、細々したものを片付けて、終了。ちょうど、颯を送り出す少し前に全部片付いた。  最後の円陣とばかりに、全員丸くなった。 「皆、準備もだし、この二日間、お疲れ」 「おつかれさまでしたー!!」  颯の声に呼応して、皆が言う。  皆、超笑顔だ。  楽しかったもんな、この集まり。  ほんと、やってよかった。  颯の友達と、オレの友達と――あと、なぜか匠の友達たち。  入り交ざって、担当したのもあって、なんだかすごく、仲良くなった気がする。 「後夜祭、好きに楽しんで。別に集合して行かなくてもいいから、各自、打ち上げの店で集合ってことで」  そんな風に言う颯に、皆は「はーい」と言った後、クスクス笑い出す。 「つか、イケメンがんばれ!」 「優勝してくださーい」 「殿堂入りしてねー」  口々に言う皆に、颯はちょっと苦笑して、頷いた。 「色々声掛けとかありがと。あとは、オレが頑張ってくるから」  そう言った颯に、ワーワー盛り上がる皆。  なんか、颯の壮行会みたいになってて、面白い。 「じゃあ、とりあえず、行ってくる」  皆が送り出してる中、「オレ、お見送りしてくる」と、颯に並ぶと、どこまで? と笑われる。 「着替える教室まで! そしたらステージの下に行くー」  そう言ったら、なんかめちゃくちゃ皆に笑われながら、送り出される。  二人で歩いて、少し皆と離れてから、颯を見上げる。 「あんな笑わなくてもよくない?」  ふくれたオレに颯は。 「可愛いからだと思うよ」  なんて言って、颯もクスクス笑ってる。 「可愛いからっていう理由であんなに笑う??」  納得できずに言うと。 「慧の可愛いは、なんか少し、笑っちゃう時もあるからな」 「それって可愛いのか?」 「うん」 「――」  なんか思い切り頷かれたので、ふと、隣の颯を見上げると。  なんだかとってもキラキラした優しい瞳で、見つめられてしまう。 「ほんと、可愛いと思うよ」 「――あ。そ、う……??」 「ん」  うぅ。胸が。  ……なんかすごく照れる。颯は、ふ、と笑うと、オレの背中をポンポン、と叩いた。  特設ステージを見ながら、その裏側の校舎への階段を上って、颯が着替える教室の前にたどり着く。 「ステージ結構ちゃんとしてたね。緊張してない?」 「いや、べつ……」 「ん?」  言いかけたのが、途中で止まったので首を傾げていると。 「――少ししてるかも」 「えっそうなの? やっぱり颯でも緊張はするんだね」  ちょっと可愛く見えて、オレは、颯の手を取った。 「あれ、あったかいね」 「ん?」 「緊張してるなら、冷たいかと思って……」 「て言うか、慧のが冷たすぎるけど」  笑いながら、オレの手を握って、スリスリしてくれる、 「もしかしてオレが、緊張してるのかも……そういえばすごい、ドキドキしてる」  そう言うと、颯は、ふ、と瞳を細めた。あ。またその顔。  めちゃくちゃ優しくて、大好きな――。 「――」  手を取ったまま。  キレイな顔が傾いて。  ちゅ、と、キスされた。 「これで、オレは平気」  ふわりと笑う颯に、オレの気持ちもふわんとあったかくなる。 「うん。――あ」  颯の手をちょっと引いて、少し屈んだ颯の頬に、キスした。 「頑張って」  見つめあって。  ふ、と笑って、颯は中に入っていった。バイバイと最後に手を振って、ドアが閉まった。  踵を返して、歩き出す。    ――多分あれ。颯って、緊張してなかったよな。くやしーなー。ほんと、いつでも、カッコいいの。  んー。信じてるのに。  だめだー。オレが緊張する!!  もうこれは、皆のとこで訴えようと、軽く走り出した。

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