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第197話 仏さま?

 皆と別れて、颯とデート。おいしいもの食べたり。ボール投げして景品貰ったり。お祭りをいっぱい楽しんだ。並んだりして色々やってると、コンテストの人だ、みたいな反応が結構あるのと。多分それを知らない人も、颯を見てく。  そういえば、皆に聞いたところによると、ここのイケメンコンテストで殿堂入りになったαの人は、モデルとか芸能界とかに入る人も居るらしい。むむ。芸能人か……。 「ねね、颯って、芸能界入り……」  ちょっと心配になって、聞いてみると、颯は、ん? と不思議そうな顔をした後、ああ、と笑った。 「過去の人のこと、聞いた?」 「うん」 「――オレが、芸能界なんて行くと思う?」 「……行ける、とは思うけど」 「行ってほしくない?」  クス、と笑われる。 「イケメンコンテストくらいならいいけど……」 「けど?」 「……そんなに皆に颯、見られたくないような……」  ふうん、と颯は面白そうに笑う。 「なんか、ほんと可愛いな、慧」  頬に触れて、ぷに、とつままれる。 「芸能人なんてならないし。まあ、オレも慧、見せびらかしたいような、見せたくないような、複雑なとこは、すごく分かる」  クスクス笑われて、そう言われる。  ……あ、颯もそんな気持ち、分かるんだ。良かった。 「そろそろ屋台に帰るか」 「うん。帰ろ。片付けないとだよね」  二人で並んで、屋台に向かって歩き出す。   「今回のコンテストは、教室の為に勝たないとだけど」 「あ、忘れてた。それいつも忘れちゃう。もともと教室のためだもんね」 「ん。――あとは、慧以外に負けたくないし」  その言葉には、ぴた、と止まってしまう。 「んん……確かに、一回は勝ったけど……なんていうか、たまたまだし、超僅差って言ってたし」 「慧が、ほんとに嬉しそうで可愛かったのだけ、覚えてる」 「――」  ぽぽぽ。なんか、ちょっと頬が熱くなる。 「……謎すぎる、颯。あん時のオレ、絶対可愛くなかったと思うのに。ていうかさ、そういえば、颯はさ、ほんとにさ、負けて悔しいとか、無かった?」 「――ん?」 「オレ、ちっちゃい勝利にウキウキして、颯に、勝ったー!とか言いに行ってたじゃん? やっぱり、ほんとはちょっとは、ムカついたり……?」  すごくムカついたとか言われたら心で泣くかもしれない、と思いながら聞いてみたら、颯はオレをじっと見つめた。 「オレ、昔から可愛いと思ってたって何度も言ってるだろ」  楽しそうに笑う颯に、なんかすごく、どきどきしてしまう。 「でも、それ、謎すぎて」  見つめて言うと、颯はなんかすごく優しく笑う。 「――可愛かったし。つかさ、慧」 「……?」 「こうして、結婚してるっていうのが、むかついてなくて、可愛いって思ってた、証拠みたいな気、しない?」 「――……」  言われたことを、自分の中で、考えてみる。 「……ん。確かに。そう、かも」 「だろ」  ふ、と微笑む颯に。 「――なんか、颯って、仏さまみたいだね」  そう言ったら楽しそうに笑い出す颯。 「怒ること、ないの?」 「――んー……慧には、ないかもな……」  なんだ、この優しすぎる旦那さまは。ヤバイよね。  オレの人生で、一番良かったことは。颯と、出会えて、ここに居られることだな、  優しい瞳で見つめられると。ほんと、毎回。キュンキュン病だし。 「ふふ」  嬉しくなって笑ってしまう。 (2024/11/6)

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