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第200話 ライブ

 もう、びっくりするなあ、ほんと――。  しばらく、呆けたまま、匠の歌を聞く。  匠、歌、すごくうまい。  後ろのバンドの皆も一緒に屋台やってた子たちだし!  ていうか言ってよ、何で隠すわけ。びっくりさせたいってなんだよもう。  まんまと、ものすごくびっくりさせられているけれど。 「匠たちって、いつからバンドやってたんだろ」 「高校ん時、軽音部だったらしいよ。イケメンっぽい部だよな?」  誠が言って笑う。 「なー? 今よりもっとカッコつけてたんじゃねえの?」  クスクス笑って、昴も言う。まあ確かに。改めて見ると、皆、顔良いし、チャラそうだし、まあ見た目からファンが居そうなバンドだけど。  でも、演奏はちゃんとしてる気がする。チャラいとかそんな感じじゃなくて、ちゃんと練習して頑張ってやってるのが、分かる感じ。  ライトがたくさん、匠たちに当たって、綺麗で、やたら眩しい。  ふっと、周りに目を向けると。  自然と皆、リズムに合わせて体を揺らしてる感じ。手拍子したり、ジャンプしてたり。めちゃくちゃ楽しそう。 「すごいね……」  思わずつぶやいてしまう。なんかいっつも可愛い匠だけど。  ふふ、と笑ってしまう。 「あいつ、カッコいいんだね」  なんかしみじみ、そう言ったら、昴たちがオレを見て「元々、一年でイケメンが入ってきた、みたいなこと言ってたじゃん」「今更だろ」と、笑うけど。  そんなこと言われても、なんか匠は、不思議と可愛い方が先に立つ。なんでだろ。  間奏になって、匠が仲間を振り返って何か言ってる時。 「いーぞーたくみー! 皆ー! がんばれー!」  おーい、とブンブン手を振ると。  ふは、と笑う匠が、仲間とこっちを見てくる。  なんかニコニコしながら、ちょっとこっちに手を振ってくる。  ふふ、と笑いながら手を最後に振り返して、オレはまた昴たちを見た。 「つか、やっぱ、あいつは可愛い気がするね」  言った瞬間。三人は、まあ分かるけど、みたいなことを言いながら、苦笑してる。 「――カッコいいって思ってほしかったんだと思うから。可愛いって言うなよ?」 「ん?」  昴の言葉に、首を傾げる。 「驚かせて、カッコいいとこ見せたかったんだと思う」 「――ん? オレに?」  そう聞き返すと、昴は、そ、と短く頷いた。  ――カッコよく、か。  そういえば昼間も、モテるの? とか聞いちゃったような。  演奏が賑やかになって、盛り上がって、匠たちのバンドの演奏が終了。すごかったー! と、めちゃくちゃ拍手! 観客からも、一番の歓声と拍手が起こってる気がする。  ――あとで、カッコよかったよって、素直に言ってあげようかな。可愛いは言わずに。  と、その時。会場が急にざわついた。ん? とステージを見上げると。匠たちがステージ中央から端へと移動していて、その舞台端に、スーツに身を包んだ、イケメンコンテストの出場者たち、四人が登場した。  あ、颯……!  颯のスーツ姿。   わーわー、超カッコいい。何あれ。  もう立ってるだけで、優勝確定なんですけど!!  ステージの端の方で、颯と匠たちがすれ違う時。  二人はニヤリと笑い合って、パン、と手を合わせた。  匠が颯に何かを言い、颯が、ふ、と笑って頷く。  ――ああ、なんか。カッコいいなぁ。颯。  そんな微笑みだけで、オレの中で、優勝決定しちゃったんですが。  あの人よりカッコいい人なんているのかな?  さすがにそれを言ったら、昴たちに何を言われるかわからないので、ちょっぴり自重してみる。 (2024/11/10) あとで消しますが。 200話で本編完結……!  ……は、出来ませんでした笑  またもうちょっとお付き合いください~(っ´ω`c)

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