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番外編 バレンタインデー 1

本編とは関係のない、バレンタインの番外編です。 関係性でいったら、本編終わったあたりとかでもいいかな(´∀`*)と。 少しの間お付き合いくださいませ♡♡ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇  学校に来て、チョコを貰ってから、気づいてしまった。  あ。今日バレンタインじゃん!! 少し前に皆でそんな話してたけど、いつのまに当日に……!   颯に送った方がいいのかな。でもそんなにチョコとか好きじゃないから、違うものの方がいいかなあ。何が欲しいんだろう。ていうか欲しいものは買ってる気がするし。聞いたらだめかなあ……なんて、ぼんやりしてる内に、今日になってた……! そもそも毎年全然気にしてなくて、貰ってから気づくっていう、そんな感じだったから……。しくじったかも……。  とりあえず学校の皆は、結婚してるのは知ってるから、友チョコだよ~って言いながらくれるので、ありがと、と受け取ってる。本命じゃないなら断るのも変だよね、と思って。  時間を追うごとに増えてくチョコたちに、ちょっと考える。  ……いいのだろうか、こんなに貰って帰って、颯に嫌な気持ちさせないかな。……多分颯は、そんなことでは怒らないとは思うのだけれど、オレに怒らなくても、ちょっと嫌だなって思わせてしまうのは嫌だし。  あー……今年からは、貰わないって言っとけば良かったかなぁ。  悶々と考えながら過ごしていた午後、Ωの仲良しの皆に会った。  女Ωの|紗良《さら》と|奈美《なみ》と、男Ωの|啓太《けいた》。  紗良と奈美が、コロンと可愛い袋に入ったチョコをくれる。 「ありがとー」  受け取ったオレの、小さな紙袋とかがいろいろある手荷物を見て、三人はクスクス笑う。 「例年通りだね~」 「また凄いことになってる」 「慧くん、あたしチョコ入れて持ってきた紙袋、結構おっきいからあげようか? これにまとめたら?」  笑う紗良と啓太の横で、奈美が紙袋を出して広げてくれる。 「あ、いいの? 助かる。ありがと」  荷物をまとめられてちょっとほっ。 「慧くん今年は受け取らないのかなって思ってた」 「あ、私もー。でも友チョコはいいかなって。颯くん許してくれそうだし」  紗良と奈美に言われて、ちょっと苦笑い。 「あー……うん、オレもさ、今年からは受け取らないって言っとけばよかったかなって、さっき思った」 「さっき?」  啓太が、ぷ、と笑いながら聞き返すので、「そう、さっき」と頷くと、皆にクスクス笑われる。 「でも颯くんは余裕だから、きっと怒んないよ」 「そうそう。慧くんが、誰かに本命チョコ渡した、てなったら大変そうだけど」 「きゃー、それは大変そう」 「ちょっとその時の様子は見たいかも」  奈美と紗良と啓太、次々に好きなこと言って、楽しそうに笑ってる。いやいや、しないから、と思っていたら。 「あーでも、それでも、颯くんは慧くんには怒らなそう」  考えながら奈美が言う。すると二人も、んー、としばし考えてから、「たしかに」と頷く。 「そうかな? 怒ると思うけど」 「いや。慧がもし誰か別の奴のところに行ったら、慧が悪いんじゃなくて、自分が悪い、とか反省しそう」 「えーそうかな……??」 「分かるー慧くんのことは責めない気がする……」 「ねー、なんかそんな気がする……」  皆がそんなことを言って、うーん、と何やら真剣に考えているのを見ていたら、なんだかおかしくなってきて、ぷは、と笑ってしまった。 「番になって結婚してるんだから、オレが別の奴のとこにいくことは、ありえないって」  言い切ると、三人、まあそだね、と笑う。 「なあなあ、それよりさ、バレンタインって、オレからチョコ、あげるべき?」 「ん?」 「オレ、男だからどうなんだろうなぁって思ってぼんやりしてたら、今日になっちゃっててさ。買いに行くなら今日でも間に合うかなと思って」  どう?? と聞いて皆の答えを待っていると、紗良が笑顔で即答。 「もともとΩの私たちからしたら、チョコはあげるものって、思ってる」 「オレは友チョコはあげないけど、本命いたらあげる」  啓太もそう言って頷いてる。奈美もニコニコしながら。 「慧くんが、なんとなくでもあげたいなって思うなら、あげればいいんじゃない?」  ――――……おお。そっか。なんだかほんわかとしながらも、心に突き刺さった。 「そうだね。颯、そこまでチョコとか甘いもの食べないからどうしようかなーて思ってたんだけど。一口でおいしいの探すことにする!」 「いいと思う。喜ぶよな、絶対」と啓太に、「うん、絶対」と笑う奈美。 「駅前の店、今日まではバレンタインフェアやってるから。昨日行ったら、結構まだ色々あったよ。ケーキとかなら、当日作って売ってるし」  紗良の情報に、なるほど、と頷いた。 「あーそっか。それもいいな……分かった、ありがと!」  なんだかとってもウキウキしたやる気な気分で、三人と別れて、最後の授業に向かいながら、颯へのメッセージ。   『ごめん颯、今日用事があるから、先に帰っててくれる?』  そう入れると、いつも通り、すぐ既読。 『何時くらいに帰ってくる?』 『んー、十八時半、とかかな』 『夕飯作っとく。途中まで迎え行く?』  わあ、いいの。と思ったけど、貰ったチョコの紙袋も買ったものも、見られたくないような。 『夕飯ありがと! 大丈夫、ダッシュで帰るから。待ってて?』 『分かった。とりあえず用事終わったら連絡して』 『うん、分かった』  そんな感じで、やりとりを終えた。 (2025/2/22)

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