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【第一章 夜に秘める】「剣を忘れるな」(4)

「どの口が言うか。この裏切者が!」 「……すまない」  ほかの言葉を忘れたように何度も「すまない」と呟いて、ディオールは元主人の前に頭を垂れた。  薄茶のつむじを見ながら、アルフォンスは己の顔を乱暴に拭う。  今更ながら視界が滲んだのだ。 「何故だ? 俺はお前を実の兄とも思い信頼していたのに……」  どんなに堪えようとしても語尾が震えてしまう。 「私だってそうだ」  ディオールが顔をあげた。  軍人らしい精悍な顔立ちを大きく歪める。 「あんたには命を救われた。それどころか兄とも呼んで慕ってくれたんだ。以来、主君と思って仕えてきた。あんたが優しくしてくれるから、私だってあんたを弟とも友とも思って……」 「ならば何故っ!」  押し殺した声は、血を吐くような悲痛な叫びに聞こえたのだろう。  ディオールが顔を歪める。 「グロムアス国王カインは、私の実の兄なんだ」

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