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【第一章 夜に秘める】「剣を忘れるな」(11)
「アルフォンス殿下。今更ですが、あなたを傷つけるつもりはなかったんです。あなたに会えて我を忘れてしまって……ですから、どうか食事を召しあがってください」
アルフォンスの体は、指の先まで動かない。
「お前、先王を殺し王位を簒奪したらしいな」
王と客人のつく食卓の会話ではない。
ロイ将軍がアルフォンスの際まで駆け寄り、カインに睨まれる。
ワインを口に含み、王は微笑した。
「そうですね。王になれば、あなたに並べるかと思って」
白々しいと吐き捨てるアルフォンス。
「欲しいものは何でも奪うという噂も聞く。王位も他国の領土も、それから人もか?」
人はあなただけですよ──そう呟いて、簒奪王は立ち上がった。
黒衣の袖がゆっくりとはためく。
予期せぬ動きであった。
アルフォンスの細い首に、ゆっくりと王の手が回されたのだ。
白い首筋に、黄金色の花の飾りがキラリと揺れる。
「アルフォンス殿下、これはやはりあなたに持っていてほしい」
深い声が耳朶を打つ。
あの熱い手がうなじに触れる。
それが身体を重ねた馴れ馴れしさに思えて、アルフォンスは立ち上がった。
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