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【第一章 夜に秘める】「剣を忘れるな」(12)
振るった手刀はペンダントを持つカインの手を叩き、黄金の花は散らされるように床に落ちた。
「これはあなたに渡そうと思って。あなたの髪と目の色を……」
その場に膝をつき、さも大切そうに拾い上げるカイン。
昨夜のようにやりすぎた、すまないとはアルフォンスとて思わなかった。
「いい加減なことを言うな。こんな金メッキで造られた紛い物!」
弱小国家の使節が何という無体をと思われても構うものか。
女のように組み敷かれ、無慈悲に身体を奪われた。
打ちひしがれた誇りは、もはや高慢で鎧おうほか取るべき態度が見付からない。
勢いそのままに、アルフォンスの腕が食卓を薙ぐ。
騒々しい音をたてて皿が宙を舞い、贅を凝らした料理が絨毯を汚す。
「陛下、拘束しても構いませぬか」
背後から羽交い締めようとしたロイ将軍の胸をアルフォンスの拳が打つ。
そのまま揉みあうように床に倒れ込んだ。
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