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【第一章 夜に秘める】屈辱のくちづけ(4)

 なぜこうも自信たっぷりに話すのか、この男は。  アルフォンスがギリリと奥歯を噛みしめる。  どんな脅しにも屈するものかと身構えた彼は、しかし王の口から出た言葉に心底呆れてしまったのだ。 「あなたが来てくれないなら、ディオールを殺します」 「は? ディオを?」  好きにしろとアルフォンスは言い捨てる。  ここに来てから、そろそろ丸一日が経とうとしている。  来た時は暗くて気付かなかったが、王の天幕は岩場の一番高いところに位置していた。  陣営内の様子が実によく見渡せる。  多くの兵たちに混ざってディオールは馬の世話をしていた。  甲斐甲斐しい働きっぷりは、まるで最初からグロムアス軍の一員のようだ。  裏切りの形を明確に見せられたようで、アルフォンスの貌から表情が消えた。 「勝手に殺せばいい」  予想外に突き放した返答だったのだろう。  カインの眼が落ち着かなさげに空をさ迷う。

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