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【終章】黄金の祝祭(3)
「あぁ、お坊ちゃん。怪我はどうですか? 無理をするなと言ったでしょう」
「お坊ちゃんはよしてください」
苦笑に、フリードは不服そうだ。
「小っちゃいときからわたしが世話をして育ててやったんですから。好きに呼んで構わないでしょうに」
「ですが……」
そんなカインの背を支えているのは、彼の弟ディオールである。
互いに負傷箇所を庇いあいながら、ディオールは兄を椅子に座らせてやった。
かつての忠臣と視線が絡み、アルフォンスは小さく頷く。
お前が無事でよかった、ディオと。
「陛下の前ですみません」
そう告げてから椅子に腰かけるカインに、フリードはブンブンと首を振ってみせた。
「何を言ってるんですか。けっこう重傷だって聞きましたよ」
──大袈裟なんですよ、コイツはと言ってやりたいところをアルフォンスはぐっと堪える。
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