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【終章】黄金の祝祭(2)
「親戚? そんなわけないでしょう。あのお坊ちゃんは孤児なんですよ。子ども時分に大怪我をして倒れていたのを、わたしが保護したんですから」
「はぁ……」
どうにも話が噛みあわない。
アルフォンスは己の額を押さえ、小さく息をついた。
そもそも「フリードの客人」としてここにいる自分の立場ですら納得がいかないのだ。
「アルフォンスさん、だから説明したでしょう。だから、わたしは死んだことにされていただけなんですから。だから、坊ちゃんがそのあいだ代わりに仕事をしてくれていて。だからぁ、わたしは……」
「うぅ……」
「だから」を連発されるものの、フリードの話はさっぱり要領を得ない。
むしろ苛々してくる。
兵士やリリアナがこの状況に違和感なく対応しているのが信じられない思いだ。
「つまり、一年前に僕が起こしたクーデターが茶番だったってことですよ」
耳朶に吸い込まれる深い声に、アルフォンスは振り返った。
開かれた扉から見慣れた黒衣が現れ安堵の吐息を漏らす。
この場合の安堵とは愛を交わす存在を前にしたというより、単に話の通じる相手がようやく現れたというものにすぎない。
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