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【終章】黄金の祝祭(5)
「一年前のことです。当時のフリード王へのクーデターを画策している一派がいると情報を得たのです」
見かねた様子でカインがアルフォンスの傍らに歩を進めた。
介護者よろしくディオールもくっついてきて、三人は一塊になってコソコソと言葉を交わすことに。
「ただし犯人が分からない。クーデターを一旦潰したとしても相手の規模が分からない以上、同じことが起こると思いました」
「つまり、お前が起こしたとされるクーデターは真犯人の機先を制するための芝居だったというわけか」
祭の日、賑わいに乗じて王殺しを演出し、フリード王を名もなき侍従扱いにして王宮の安全なところに保護したのだ。
カインとしては自分の手の届かない街にフリードを逃がすより、灯台下暗しで王宮に匿うほうが安全だと判断したのだろう。
フリードに死体のふりをしてもらったとはいえ、事があっさり収まったのはロイ将軍がすぐに新王カインを支持したからだ。
そういえばカインが軍拡路線を止めてくれると期待していたと言っていたっけ。
「便宜的に僕が王位を奪ったということにしたんです。クーデターの犯人を暴いたら、王位は陛下にお返しして僕は姿を消すつもりでした」
「そんなことしたら……」
お前ひとりが悪者扱いされるだろう。
下手をすると歴史上に悪名が残ることにもなりかねない。
「せめて俺には言えばいいのに」
小さな呟きは、カインの耳には届かなかったようだ。
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