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【終章】黄金の祝祭(10)

「すまない、アル……」  ディオールはいつものようにシュンとうなだれてしまった。  怪我人相手にけっこう辛辣ですねと、カインの眼も泳いでいる。  助けを求める弟の視線に気付いたようだが、こちらは無視する構えのようだ。 「そもそもディオ、お前は……」  アルフォンスの声が一段と低くなった。 「お前は自分の立場をはっきりさせろ。俺側(レティシア)か、グロムアス側か。微妙なようではいつか背後から刺されるぞ」  腹を押さえていた手をディオールは下ろした。  かつての主人で友、そして弟分の手をとる。 「私は幼いころ奴隷として捕らえられた。兄さんのおかげで逃げることができたが、行くあてもなく一人孤独にさまよっていた。それを救ってくれたのはあんただ」  白い手のひらは華奢なようでいて剣だこで固い。  ディオールはその指に唇を寄せた。 「兄さんもそうかもしれない。だが私にとっても、あんたの黄金は救いだったんだ」 「ディオ……」 「あんたを守りたい。それだけなんだ。始めから言っているだろう」  微かに微笑んで、アルフォンスはもう一度兄貴分の胸を叩いた。      ※  ※  ※

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