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6話 夢のようなひと時でした!(やっぱり夢かもしれません)
突然、推しが自宅訪問?!
は?!意味がわかりません!!
しかし間違いなく目の前にいるのはワタクシの推し、新見駿くん!!!
そしてその隣には息子。
「いえーい、サプライズせいこーう!」
「すいません急に。助手席にリハルドのぬいぐるみが置いてあって、そこからご両親の話で盛り上がっちゃって」
(素敵ボイスで照れくさそうに笑う推し!! 尊い! 尊すぎる!!)
「母さんが兄さんのファンだって教えたら会いたいってさー」
「ひゃぁぁぁあ! そんっ! そんっな!!」
(おこがましすぎる!! 無理! 無理無理!!)ワタクシ、完全にキャパオーバーで、まともに言葉も出てきません。
「えーと、驚かせてすいません。大丈夫です?」
(推しがっ! 推しが、ワタクシのことを気にかけてくれてる?!!?!)
あわあわと声にならない叫びをあげて、完全に思考どころか行動すら停止しているワタクシを目に、息子は平然と
「いいのいいの、いつもこんな感じだからー。気にせずあがってあがって!」
(いつもってなに?! 流石に今日ほど驚きと感動と喜びと尊みとその他色々感情ごっちゃでパニックになったことなどないわよ)
「ねえ、父さん。例の準備できてる?」
「できてるよー、ちょっとリビングで待っててー」
(は? なになに? まだなにか驚くようなことがあるってこと?!)
玄関先で完全に固まって動けなくなってしまったワタクシを尻目に、息子は勝手に駿くんをリビングに案内してお茶などを淹れているようだ。
ワタクシもふらつく足をもたつかせながらリビングを覗く……
「ひふわぁああああ!!」
無理!!! 推しがいる!!!!
無理無理無理!! 尊みが過ぎて直視できない!!
「母さん、なに廊下で悶えてるの? せっかくなんだから入ってお話ししたら?」
後ろから夫くんの声がかかって、ふるふると首をふりつつ「無理! むりぃ」と言って振り返りますと……
「ひゃぁい?! りりり、リハルドしゃま?!!?」
夫くんが先週と同じコスプレ衣装でそこに立っております。
「うわぁ! すごい!! ほんとにリハルドだぁ」
?!?!!?! もう意味がわかりません。理解不能です。
推しの姿をした夫くんと、推しの声をしている推し(いやそれは当たり前なのですが)
リハルドの姿でリビングに入っていく夫くん、リハルドの声ではしゃぐ駿くん。
なにこれ? どういう状況?!!?
うちのリビングで行われていいのか? いやだめだろ、ありがたみが過ぎて勿体無さすぎる!!
混乱の極みのワタクシを置いて、リビングでは男性陣3人が楽しく盛り上がっております。
そのうち夫くんがポーズをとりはじめ、
必殺技のポーズをとると、すかさず駿くんが
「ライトニングスラッシュ!!!」
「ふあああぁああっ!!」
「おぉっーー! すごい! 本物の声だぁ!! ほんとに必殺技だしたみたい!」
「まって、まって! もう一回、もう一回やってよ。動画撮るからさ!」
(ななんなな、なんてことでしょう!!!
リハリド様降臨?!!? コスプレした夫くんに駿くんがアテレコとか、なんという!!!)
「え? いいの?」
「いいですよー、すげぇ楽しい!」
「動画あとで送るけど、絶対にネットにあげちゃダメだからねー」
「もちろん!! わかってるよ。
わー、すごい嬉しい。大事にするね!」
「「それじゃ、せーの」」
「ライトニングスラッシュ!!!」
(ふわぁあああああ!!!)
「ちょっと!! 母さん! 静かにしてよー。叫び声が動画に入っちゃったじゃんか」
「ぅひゃぁ! そんなっ(ちゃんと声を抑えたはずなのにぃぃ)」
口元をしっかり手で押さえ、それでも目だけはしっかりと開けて(こんな瞬間見逃せませんとも)
「わた、わたワタクシ、壁にっ……壁になっています」
ピッタリと壁に張り付き、必死で声を堪えて壁になることに徹します!
その後も駿くんも楽しそうにいろいろなポーズにアテレコしてくれます。
息子も夫くんもすごく楽しそうです(壁という一番の特等席で堪能させてもらったワタクシも大満足です)
「ほんと、ありがとうねー!楽しかった」
「こちらこそ楽しかったです。また新しいコスプレ見せてくださいね。」
「それじゃ僕ら、このまま電車で帰りがてら、飲みにいくからそろそろ行くねー。」
「じゃあ、駅まで車で送ってくよー。」
「えぇ?! その格好で?! 父さんマジで?」
「なにそれ、面白すぎる」
……壁になっていたワタクシ、1人家に取り残されましたが、まだ呆然として思考が追いつきません。まだしばらくは壁でいます。
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