67 / 112
02大仰な家族会議
俺とアルビオンの会話を、柚希も聞いていたらしい。
突然俺の服の中から柚希が飛び出した。
「なっ!? スライムを服の中に忍ばしていただと!? やはりこやつは悪魔憑きじゃないか!? ティアニー公爵令息よ!! 貴様の剣は飾りか!! 早くこの魔物を斬れ!!」
「あー、もー。煩いなぁ、このオジサン。本当にヴァニタス君とシルヴェスター君の父親?」
柚希はそのまま人間型になる。
柚希の服装に、マドリーンがピクリと反応した。
「お兄さんの名前は柚希颯志。みんなのお兄さん且つ森野響哉君のお兄さん。マドリーンちゃん。森野響哉君からはお兄さんを見つけ次第送り返せっていう命令が出てる筈だけど? お兄さんを切ってもいいの?」
いや、いいんだけど。
1児の母に“マドリーンちゃん”って……。
「森野響哉とは……まさか……」
「森野響哉君に心当たりがあるみたいだね。猫ちゃん」
マドリーンは目を見開いた。
「どうして……それを……」
「ここにいるアルビオン君は“転生者”の前世の姿が見えるんだ。君の姿は猫に見えたそうだよ」
マドリーンは何度か口を開いて、閉じる。
そして俯くと、こう告げた。
「はい。私の前世は猫です。そして人間を恨んでいます。私の大好きなお姉ちゃんが自死して、おじいちゃんが虐められたあの時から……」
「ま、マドリーン……?」
親父が目を白黒させている。
そんな親父を、マドリーンは睨んだ。
「ナイジェル様。私は魔王の命令で貴方に母親のように優しく甘く接しました。しかし、私の心はずっとモヤモヤとしていました。私の大好きなお姉ちゃん、千紗ちゃんのように貴方の先妻、レオノーラ様が自死したあの時から……」
「魔王……だと?」
ナイジェルが唸るような声を出した。
危ない!!
「《再錬成》!!」
俺は金属片を剣に変えて、大剣をマドリーンに向かって振り下ろした親父の剣を受け止めた。
「お、重っ……」
「お前は剣術を学んでいるわけではないみたいだな。魔法士風情に俺の剣が止められるか。片腹痛いわ」
やべぇ。
このままでは押し切られる。
「シルヴェスター!! ヴァニタスとマドリーンをお願い!! アルビオンとジェラルドは力を貸して!!」
両腕を刃物のように変え、俺とナイジェルの間に乱入してきた柚希が、俺の腹を蹴った。
俺とすぐ後ろにいたマドリーンは、シルヴェスターの後ろに吹っ飛ばされる。
すかさず、シルヴェスターが剣を抜いて俺とマドリーンを守るように立ちはだかった。
「スライムちゃん、やるー!! でもどうすんの? 流石にアッシュフィールド公爵を切るのはまずいよ」
ジェラルドは既に臨戦態勢だ。
それを見てアルビオンも剣を抜く。
「話をするにしても無力化させないと!! 最低でも大剣をどうにかしないと!!」
柚希がすばしっこく応戦しているが、ナイジェルの一撃は重い。
流石固有グラフィック有りの強敵、『アルビオンズ・プレッジ』のラスティル編の中ボスであるナイジェル・アッシュフィールドだ。
強い……。
ともだちにシェアしよう!