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03大仰な家族会議

「柚希下がれ!! 魔力が切れるぞ!!」  ジェラルドと共に応戦しながらアルビオンが叫ぶ。 「そんなの気にしていられるような相手じゃないよ!!」  剣撃の重さにアルビオンが体勢を崩す。  すかさず柚希がアルビオンを庇った。 「アッシュフィールド公爵が剣豪だとは聞いていたけれど……」  ジェラルドも防戦に回っている。  くっそ……。 「ヴァニタス、マドリーン、大丈夫か? ……アッシュフィールド公爵の奴、完全に頭に血が上ってるな。俺がいることを忘れてやがる」  セオドアが俺とマドリーン、シルヴェスターの元へと来た。 「申し訳ございません、セオドア様」 「いや、こちらもまさかアッシュフィールド公爵が貴女を斬ろうとするとは……想像できなかった」  俺も同じだ。  まさか親父がマドリーンを斬ろうとするとは。 「なぁ、ヴァニタス。アレ、今できるか?」  セオドアが俺に尋ねた。  アレ??  「決闘の時の……」  あっ!! 「《歪んだこの想いよ、執着よ。願わくば彼を拘束して欲しい。私から決して離れぬように》」  セオドアとの決闘の際に歌った『アディクト』を口ずさみ、触手を召喚する。 「《対魔法・対魔術》《接続》《命令改竄》《代役使役》《標的:ナイジェル・アッシュフィールド》」 「《穏やかな聖母の声よ、彷徨い疲れ眠る骸に深く響け》」  セオドアが俺の代わりに触手を使役し、親父に差し向ける。  すかさず俺は『天使祝詞』を歌った。  アンデッドと違って親父には攻撃威力はないが、戦意喪失の面で言えば『プロミスド・サンクチュアリ』よりこちらの方が高い筈だ。  案の定、冷静さを取り戻したが故に動きを鈍らせた親父を、セオドアが使役する触手が拘束する。 「貴様……まさかセオドア様の偽物か? マドリーン、貴様が魔物を呼び込んだのか? それともヴァニタス、お前がマドリーンを洗脳したのか?」  観念したのか、親父は大剣を手放した。  前衛で戦っていた柚希、アルビオン、ジェラルドの3人はほっと息を吐く。 「まぁよい。殺せ」  やや投げやりに、親父が言い放つ。 「殺しはしない……が、少し大人しくはしてもらう」  セオドアはパチンと指を鳴らすと触手を消す。  すかさずジェラルドが縄で親父を椅子に拘束した。 「ティアニー公爵子息。貴様も洗脳されているのか?」 「あー、まぁ、とりあえず落ち着いて話聞いてよ」  一応公爵家当主相手なのだが、ジェラルドは容赦なく拘束してゆく。  セオドアの命令の方が上なのかもしれないが……案外面白い奴なのかもしれない。 「その歌……千紗ちゃんもよく聴いてた」 「そうか。転生者だから、この歌を知っていてもおかしくないのか」  マドリーンはコクリと頷く。  今更ながら、地下水脈攻略時のユスティートとスピルスの言葉を思い出す。 『ヴァニタス様が定期的に領域魔法を展開してくださいますし、時々歌声も屋敷に響いていましたが……ラスティルの言葉ではないですよね?古語でしょうか?』    こう口にしたユスティートに対して、スピルスはこう言った。 『いや。古語でもありませんし、他国の言葉でもないですよ。私もずっと気になってはいました』  スピルス……あの野郎、俺の歌う歌が全部日本の流行歌だって知ってて知らないフリしてやがったんだな……恥ずかしい。  後で覚えてやがれ。

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