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02里帰り

「…………そう。やっぱりあの子が転生者である可能性が高いんだ」  マドリーンが悲しそうに俯いた。 「私は姉失格だ。アレクシスの苦しみにも、あの子が背負っているものにも気づかなかったなんて……」 「それはお互い様だろ? えっと……義母さん、も」  俺の言葉に、俯いていたマドリーンが顔を上げて俺を見る。  やばい、めちゃくちゃ恥ずかしい。 「……義母さんも、アレクシスに余計な負担をかけたくなくて、前世のことを言わなかったんだろ?」  今、俺……多分顔、真っ赤だ。 「ヴァニタスが“義母さん”って言ってくれた」 「良かったですね、母上」  マドリーンが嬉しそうに笑った。  良かった……恥ずかしかったけど、言って良かった。  シルヴェスターとマドリーンの仲も良好そうだ。  安心した。 「でも、そうね。私の方はアレクシスに信じて貰えないのが怖いという思いも強かったけど……」 「それも一緒だと思います、母上。アレクシス叔父上を育てたのは母上でしょう? でしたら、アレクシス叔父上の方が恐怖感は強かったかもしれません」 「やっぱり、私の方があの子の抱えているものに気づくべきだったのね」  これは……。 「話し合いの場を設けるべきだねー」  俺の言いたいことを代弁してくれたアルビオンに頷く。  でも、ひとつ問題がある。 「今の段階では、俺の結界は恐らくアレクシスを弾く」  アレクシスも俺を敵視しているだろうし、俺もアレクシスのことを快く思ってはいない。  きっと俺の結界は、アレクシスの侵入を弾くだろう。  そしてマドリーンは、現段階では親父の許可なくこの離れ屋敷から出られない。  親父に許可を取るか……? 「どうしたモンかな……」 「ヴァニタス。ユスティートに言ったこと、忘れたの?」  頭を抱えていると、柚希が口にした。  ユスティートに言ったこと……? 「あぁ!? 手紙か!?」  マドリーン、シルヴェスター、アルビオン、マチルダが驚いたように目を見開いて俺を見る。 「義母さんが書いた手紙を、アレクシスに届けることはできる。その逆も」  思い出した。  ウィリディシア王女との婚約に悩むユスティートに文通を提案したのは俺だ。  それはマドリーンとアレクシスにも言える。 「マドリーンはともかく、アレクシスがヴァニタスに自身の文を託すのかという問題はあるけどね」 「ですよねー」  柚希は時々容赦ない。  でも、そうだな。  俺がアレクシスに手紙を託してもらえると思うのはちょっと甘かった。 「でも、少なくとも、マドリーンの思いをアレクシスに伝えることはできる」  柚希の提案にマドリーンはコクリと頷いた。 「わかった。アレクシスに手紙を書く。前世も含めて手紙で全て説明する。ヴァニタス、あの子に届けてくれる?」  俺が頷くとマドリーンは……義母さんは笑った。  義理でも、母親がいる……家族がいるというのは良いモンだな。  何だかすごく温かい。  この幸せを守りたいと、強く思う。

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