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03罪と罰

「シルヴェスター……」  山小屋から女の子が出てきた。 「貴女がウィリディシア王女ですね」 「えぇ、ロータリア王国フロース王家の王女、ウィリディシア・フロースです」  セオドアが周囲を見回した。 「スヴェン、彼女をアッシュフィールド公爵家の離れ屋敷にお連れしろ。できる限り早く」 「しかし……」 「いいから行け!! これは命令だ!!」 「はっ…………セオドア先王陛下、ご無事で。ヴァニタスも」  スヴェンがウィリディシア王女を抱き上げ、山小屋から離れる。  ジェラルドの方を見た。  ジェラルドが頷く。  本番はこれからだ。 「大体……前世視点で物事を見るなら、俺はお前を恨まなきゃいけないんだぞ? 乙村直澄は天塚隆斗に殺されたんだから……」 「……それは!?」 「脚本を書いたのが前世の兄上でも、実際に俺を殺したのはお前だろ? 自分の罪まで兄上に押しつけるつもりか?」  アルビオンがちらりと俺を見て、視線をまたシルヴェスターに戻した。 「…………すまない」 「そう思うなら、天塚隆斗じゃなくてアルビオンとして今を生きろ」  アルビオンがコクリと頷く。 「すまない、アルビオン……前世のお前を幸せにしてやれなくて」  アルビオンが身体を起こした。  そして、しっかりと俺を見据える。 「お父様、天塚隆斗は貴方を許せません。貴方は俺たちを殺した罪人です」  アルビオンの言葉に俺は頷く。  確かにそうだ。  俺は乙村直澄と天塚隆斗を苦しめ、不幸のドン底に陥れた罪人だ。 「でも、アルビオンは赤津孝憲がどんな人間なのか知ってる。赤津孝憲は他人が不幸になることで悦楽を感じるような人間じゃない。もちろん、ヴァニタス・アッシュフィールドも」 「…………」 「ただいま、ヴァニタス。迷惑かけてごめん」 「おかえり、アルビオン。その言葉はウィリディシア王女とセオドアたちに言うんだな」  俺はアルビオンと笑い合う。  その時だった。 「来た!!」  ジェラルドが叫ぶ。  重圧を感じた。  俺はアルビオン達と顔を合わせる前、山小屋を囲むようにあらかじめ描いておいた魔法陣を起動させる。 「《領域魔法展開》《結界起動》」  そして歌う。  『プロミスド・サンクチュアリ』を。  歌が結界を強化してゆく。  もう一息。 「《対魔法・対魔術》《結界接続》《結界強化》」  セオドアが俺の結界に手を加える。  結界が更に強化された。  俺たちを押し潰さんとする激しい重圧と、それを阻止する為の結界。 「《魔力譲渡》《対象:ヴァニタス・アッシュフィールド》《対象:セオドア・アイテール》」  スピルスの声と同時に魔力が流れてきた。  ありがとう、スピルス。  俺は歌う声を更に張り上げる。  俺は、絶対に、皆を守る!!

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