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第232話 藤尾集蔵
もう一人、常連がドアを開けた。
「いらっしゃい。藤尾さん,お久しぶりです。」
藤尾と呼ばれた男は、円城寺と連れ、の3人組をジロリと見た。円城寺の連れが慌てて、小声で
「やばいよ。知らないのか?この業界で、藤尾さんを知らなかったらモグリだぞ。伝説のお方だ。」
円城寺は知らないようだった。
「マスター、随分ガラの悪いのがいるようだな。
この店に相応しくないな。」
「なんだと!」
立ち上がって声を荒げている円城寺を連れの二人が必死になって止めた。
藤尾はあの、奥の老人たちの子飼い、だ。東京を仕切っている、と言っても過言ではない。ヤクザではない。今時はヤクザではシノギも出来ない。もっと大きな裏社会だ。暴力団も中国マフィアも半グレも政治家も、藤尾の決済無くしてこの国でビジネスは出来ない。
滅多に表には出て来ないあの老人たちの代わりに動いている組織のトップだ。あの老人たちは藤尾の更に上の存在だ。
国民の知らない所で国は動いている。表に出てくる情報は、そのほんの一部、だ。
いくらヘイトスピーチで同性愛者を糾弾しても、この国には衆道が存在する。古来、伝統として人々の暮らしと共存して来た。それは神代の時代からだ。日本書紀に書かれているこの国の成り立ち。それはもの凄く自由だった。その性愛も、何でも有りだった。
もちろんいろんな読み解き方がある。一般的な学者の説だけが真実を伝えている訳ではない。この国に脈々と続く神話の世界は実在する、かもしれない。
ロジの研究はそれを裏付けるため。タカヒロの考古学もそれを裏付け発掘するため。学問は枝をひろげ、繋がっていく。
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