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第239話 あの日になんか戻らない
ロジ語り・・
手の中の小鳥は、押し潰してしまわないように大切に扱っていたら、いつの間にか、強い羽を持って飛んで行く。そして遊び疲れたら、また私の元に帰って来る。 ミトはそういう子だな。
いつも忍耐力を試されているようだ。気まぐれに何処かにいなくなって、でも帰って来る。
ハジメを連れて来た。次はハジメを追いかけてインドにまで行ってしまった。
ハジメを愛しているのか?と思うとそれ以上に私を愛している、と,帰って来る。いつも本気で、ミトの中では、矛盾も葛藤も、ない。自分の求めるものに正直なだけだ。
みんなミトの魅力に抗えないのだ。ミトの中では整合性がある。不思議に憎めない。ミトは無垢だ。 そんなロジとミトの関係。
ミトと出会ってロジは変わった。プレイボーイの称号を返上する。ミト以外誰も愛せない。でもミトを縛らない。
ミトは昔のパリ辺りにいた高級娼婦のようだ。気に入った客しか相手にしない。そしてパトロンを裏切る。裏切ったことさえ気にしない。
ミトの残酷な純粋さ。それでも愛している。
ミトもロジを誰よりも愛し頼りきっている。
ハジメ語り・・
タカヒロはハジメに一途だ。そばで見守っていて、その純粋さが伝わってくる。守ってやりたい、と思う。
一時期、ハジメはミトに夢中だった。仕事だったがミトがインドまで追いかけて来た。インドからネパール、一年近く続いた二人の、ハネムーンのようだった。
「ミトは俺のマリーチーなんだ。摩利支天。守り神さ。俺だけのものにはならない。」
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