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第238話 あの日になんか戻らない

「傑、煙草吸うの?」 「ああ、ずっと止めてたんだが、ウヰスキーを飲むと欲しくなるんだ。 店ではほとんど酒も飲まないから、煙草も欲しくならない。煙草の煙を嫌うお客さんが多いから 吸わないようにしていた。」  傑は深夜、一人になると煙草を吸った。 店が終わっても、一人の夜は長い。酒の量が増えるので、合間に煙草を吸った。  今時は煙草は目の敵にされる。愛煙家は肩身が狭い。そうまでして吸わなくても良い、と止めていたのだが、この頃何故か、酒を飲むと吸いたくなる。 「カッコいいよ、傑が煙草吸ってるのって。」 「そうか?嫌じゃないなら家でだけ吸ってもいいか?」 「うん、傑の煙草の匂い,好き。」  礼於の額にかかった髪を手で梳いて口づける。 (なんて愛しいんだ。隣にいるだけで切なくなる。 夢の中にいるようだ。)  時々,不安になって抱きしめる。礼於が確かに存在している、と確認して安心する。  腕に抱かれていた礼於が傑を見上げて 「大好き。世界一大好き。」 可愛い声が応える。    ロジがミトに 「血の滴る心臓を捧げる」  と,言ったあの二人の出会いの時から、今でも熱い気持ちは変わらない。  ロジはその独特の価値観でミトを自由にさせている。ミトは自分の気に入った人と愛し合ってしまう。ロジはハジメと分け合う事に耐えた。

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