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第1話 青山 誠①

15階のマンション 駅から近いその建物に毎日のように響く朝のラッシュ ガタンゴトンと電車の行き交う音。 家の雑音。 「ふんがっ…………くかぁー」 ジリジリと鳴り響く目覚まし時計…………。 そして 「もう!! 目覚まし時計くらい止めなさい!!」 「んにゃー」 「んにゃーじゃない学校遅れるわよ!!」 と怒鳴り声を朝から頭に響く母さんの声 ペロペロと舐めてくる猫のミーヤ 「んあぁああああー」 大きく欠伸して眠たい顔で洗面所に立ち、バシャバシャと顔を洗う。 その時でさえミーヤが足下ですりすりしてきた。 「んー、一生夜でいい」 「またそんなこと言って、出る時間まで20分しかないわよ」 「ん」 リビングのカウンターの椅子に腰かけすでに冷めてしまった朝飯を口に運んだ。 「にゃー」 「ミーヤは朝ご飯食べたでしょ」と言いながらおやつをあげている母を横目に 「父さんは?」 「もう会社に行ったわよ」 母は洗濯物を干しにベランダへ。 食器を洗って歯を磨いて制服に着替えて家の扉を開けた。 「行ってくる」 「行ってらっしゃい、今日は部活?」 「んやっ勉強」 「頑張ってきなさいよ」 「ほーい」 エレベーターを待ってる人がいた。 その背中に見覚えがある 「おはようございます、慎二さん」 「やぁ、おはよう、今日は随分遅いね寝坊でもした?」 「いつもですよ」 ラッキー隣のお兄ちゃんに会えるなんて朝からラッキーだ。 一緒にエレベーターに乗り込み会話をする。 「今日数学のテストなんっすよ、憂鬱すぎます」 「そうだなんだ、でも昨日やったとこの復習ができてれば余裕だね」 にこっと笑顔を返された。 「んー昨日の復習してない」 「こら、ちゃんとしないと」 「うーん」 「じゃぁ誠くんいい点数とれたらなにかプレゼントしてあげる」 「ダメですよ、そんな簡単な挑発には乗りませんよ」 「そっか、それは困ったな、駅前のケーキ屋誠くんの大好きな焼き菓子何個かあげよっかなって思ったのに」 「……ずるい!! ぎぎぎぎっ」 エレベーターが1階につくのと同時に頭に手を置いてきた。 「大丈夫、誠くんなら大丈夫だよ」 そう言われなんとなく大丈夫な気がした。 「ほら、学校遅刻するよ」 と言われマンションからダッシュで駅に向かった。 意外と時間ギリギリだったのを思い出したからだ。 駅前につくと絶対みんな同じこと思ってるであろうこの甘い香り。 「すーーーーーーはぁーーー、ごちっ」 思いっきりケーキ屋の前で息を吸い込み改札に向かった。 駅前にあるケーキ屋毎朝毎朝いい香りで絶対に誘惑してる!!! 『えーまもなくドアが閉まります』 「まっ……」駆け込み乗車をした。 『危ないですので駆け込み乗車はおやめください』と明らかに俺に向かって言っている。 セーフ。 この時間帯は満員電車だ。 ほぼドアと人と板挟みになって乗車することになる。 たまに乗るの下手なやつとかいんだよな。 スマホ!! 邪魔 そのスペース俺にくれって思うこともしばしば。 電車に乗って3つめの駅で降り、商店街を10分歩けばつく。 特に特別な学校でもない。 すでに公立だしな。 「ギリセーフ?」 「青山セーフ」 「あぶっねぇ」 「遅刻にならんくて良かったな」 「いやーまじ走ったわ」 そう俺は結構ガチめに遅刻するとこだったのだ。

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