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ぷろろーぐ

 ──予感がして、家の外に出た。  あ……雪……。  まるで、あの日みたい。  濃いピンク色の花をつけている桜に、うっすらと積もる白い雪。  そして、朝日がそれを紅く染め上げる。  早朝の、ほんの数分しか見れない光景。    この地域に雪が降ること自体それほどなく、ましてや積もることなど、ひと冬に一、二度程度あるかないかくらいだ。  三月に入って、この桜が咲いている時に降るなんて。  この奇跡みたいな光景を、また見ることができるなんて。  早咲きの──小中学校の卒業式にも入学式の時期にも咲かない桜。  この桜の花の祝福を受けるのは、唯一今日この日だけ。  高校の卒業式の日だけ。    昨年もこの光景を見た。  奇跡はまた起きた。  そして、そこには、もうひとつの奇跡。  道を挟んだ向こう側に、こちらを見つめる瞳を──僕は見つけたんだ。

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