1 / 156
ぷろろーぐ
──予感がして、家の外に出た。
あ……雪……。
まるで、あの日みたい。
濃いピンク色の花をつけている桜に、うっすらと積もる白い雪。
そして、朝日がそれを紅く染め上げる。
早朝の、ほんの数分しか見れない光景。
この地域に雪が降ること自体それほどなく、ましてや積もることなど、ひと冬に一、二度程度あるかないかくらいだ。
三月に入って、この桜が咲いている時に降るなんて。
この奇跡みたいな光景を、また見ることができるなんて。
早咲きの──小中学校の卒業式にも入学式の時期にも咲かない桜。
この桜の花の祝福を受けるのは、唯一今日この日だけ。
高校の卒業式の日だけ。
昨年もこの光景を見た。
奇跡はまた起きた。
そして、そこには、もうひとつの奇跡。
道を挟んだ向こう側に、こちらを見つめる瞳を──僕は見つけたんだ。
ともだちにシェアしよう!