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樹編〜花詞〜 4

 誕生日のプレゼントは結局あの時目についた、白い小さな花がたくさんついた鉢植えにした。  勿論あの花屋で購入。  店長に揶揄われながら。  そして、クリスマス。  クリスマスプレゼントは決まっていた。  手袋だ。  七星の手は夏でも割とひんやりとしているが、冬には氷のように冷たくなる。昔からそんな感じで、それは再会してからも変わらなかった。  再会した年のクリスマスイブ、二人で並んで歩いた。珍しく雪がちらついて、しんと冷える夜だった。七星が自分の手に息を吹きかけてた。 (ああ、手が冷たいんだろう。昔と変わらない)  そう思ったら俺の手で温めてやりたくなった。まだ七星に対して距離を置いていて、堂々と「温めてやる」とは言えず『早く帰る』ということに(かこ)けて手を握った。  俺より小さくて冷たい手。  心臓が跳ね上がるのを抑えながら、その手を引いて歩いた。  ふんわりとした温かそうな白い毛糸の手袋。  それから──ストックという花。  本当は手袋だけのつもりだったのに。俺はまたしても花を添えてしまった。  花言葉は『愛情の絆』『求愛』など。  そして、白いストックには『ひそやかな愛』。ピンクのストックには『ふくよかな愛情』という意味があるらしい。  しかし、あくまで主役は手袋だ。  ということにしておこう。 ★ ★  別に、花言葉で想いを伝えようと思ったわけじゃない。  だって、そうだろ?  贈る相手は俺と同じ男で、特別花に興味もなさそうで、花言葉なんてそれを上回るだろうし。  ただ言えない自分の『想い』を、この溢れ出してしまう『想い』を『花言葉』の中に閉じ込めただけ。  それに。  七星が俺と同じように俺を想ってくれるなんて、そんなのは夢のまた夢だ。  なにしろ『親友』だから。  七星にはきっと、七星よりも小柄な可愛い女の子が似合う。  それでも。  俺が大学に合格して無事卒業することが出来たら。  俺は俺の気持ちを伝えよう。  きっと七星なら引かないでくれる。俺を許して、『親友』という座にいさせて貰える。  それを信じて。  ──だから、俺は驚いたんだ。  赤い薔薇の花束を抱えた七星を見て。  何か確信があって外に出たわけじゃない。  ただ、七星の卒業式の日の朝偶然出会えたように、今日も偶然を期待しただけのこと。  奇しくも、余り雪の積もらないこの地域に同じように雪が積もった──まるで、あの日と繫がっているかのように。  そして──奇跡は起きた。    

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