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第1話

今日も色々なところから兄ちゃんの気配がする。 あちこちからキャーだのなんだの声が聞こえる。それは街中だけじゃなくて今日も今日とて兄ちゃんのことを知ってる人たちに周りを固められて全く動けないでいた 「ねぇねぇねぇ!!!」 「はい」 「今月ファッション誌の表紙だったね!今日も歌番組出るでしょ!?それにそれに!初ドラマだって!?」 「そうだけど…」 「あー!!サインもらっとくんだったぁ!!この間までこの高校にいたのに!!かっこよかったもんねぇ」 「うん。」 「ねぇ!サインもらってきて!!」 「無理だってば。もう実家にはいないしそもそも休みないくらい働き詰めなんだから」 「じゃあ連絡先おし…」 「…えるか!!それこそ大問題になりかねない」 「なによぉ!地味なくせに生意気な」 「うっさいです」 一人ひとり何度同じことを話すのか…正直疲れてる。 密かに隣で思ってるだけで良かった…ずっとずっと俺の中でこの思いは墓場まで持ってくつもりだった。だって俺だけの兄ちゃんだったんだから… だけど… 俺!アイドルになるっ! なんて急に家を出ていって帰ってくることなく次に兄ちゃんを見たのはテレビの中だった いやいや…本当にアイドルになるとか…なんでだよ…目立つのあんなに嫌いだったのに… モテてたくせに交際相手はいたことなくて…って言っても俺の知らないうちにいたかもけど…だけど時間が開けば俺のところにきて俺をずっとずっと抱きしめて来てたのに…それが弟のように思われてて猫可愛がりされてるだけなんだって知ってたけどその時間は俺だけの特別なものだったのに… なんでだよ…にいちゃん… 帰宅する道中も街中の大型ビジョンだったり大きな広告だったりコンビニの雑誌売場だったり…どこに行ってもあの人を見かけるのに本人は一切姿を見せなくて… 「会いたいな…」 なんて帰宅して部屋で呟いた 「おっ!かっ!えっ!りっ!!!」  どんっ!とすごい勢いで俺の背中にぶつかる人。な…な…なんで…は?えっ!?突然のことにひっと息が止まるかと思った

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