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『まったく体と頭の成長速度が釣り合わぬ男だ……見てくれはむしろ年より熟しているくせに、幼児のような見解ばかり……』
ガックリと疲れ果てる声。
要するに老け顔バカということだが、一斉には伝わらない。
声は『まあいい』と呆れながら、話を続けた。
『オマエにはワタシたちの呼び名で言う[座標あおいうええお]という世界の[ジェリエーロ帝国]という国に行ってもらう』
知らない名前の知らない国。
横文字の国か? こちとら日本語も怪しい会話ベタのぶっきらぼうだが、なんとかなるのだろうか。
『異種族による交流が盛んでよそ者に寛容。戦争なし。ダンジョンを生活源の主とし、クエスト、ハンターなど……まぁあれだ。オマエの世界で言うRPGと同じ感覚で掴める世界を選んだな』
「あぁ……」
自分のコミュニュケーション能力を底辺だと思っている一斉は身構えたが、RPGだと言われてホッと息を吐いた。
ドラゴンなんちゃら。モンスターかんちゃら。そういうゲームなら兄貴分からレベル上げを頼まれてしたことがある。あれならなんとかなりそうだ。
危惧していた言葉や文字は自然と読める、聞こえるものに変換されて届くよう、一斉の頭を弄ってくれるらしい。
『オマエには、オマケで言葉の意味もちゃんとわかるようにしてやろう。難しい単語が出てきても、元の世界にあるものなら理解できるようにな』
「挙手、か」
『そういうことだ』
特別にオマケを付けてもらえると聞き、表情を変えずに感動する一斉。
過保護の理由は〝放っておくと人さらいにあって半日で死にそうだから〟なのだが、一斉は知る由もない。
『そうそう。喫茶店に必須なドリンクだが……人間ではないワタシたちには細かいことがわからない。故に、オマエには試練達成のためのボーナスを授ける』
「ボーナス?」
『あまり大きなものではないが、ペナルティを熟すための補助……特別な能力だな』
声の言葉と共に、フォン、と一斉の目の前に、また違う文字が現れた。
「ドリンクバー」
『そう。オマエのボーナスの名前だ。音が良い』
読み上げると表示が変わる。
見たことがないものから馴染みのあるものまで、様々なドリンクが映った。
『どんなドリンクもオマエが想像するものは、全て最高の品質で作り出すことができる。中身が劣化しないよう特殊な器もつけてやろう』
「スゲェな」
『ワタシたちはスゴイからな。しかしワタシたちに繊細な味などわからぬ。故に、オマエが思うとおりの効果を付加することもできる仕組みにしておいた。例えば、飲むと温かくなるだとか、飲むと癒されるだとか』
飲み物を飲むとそんな効果があるのだろう? と尋ねる声に、まぁ、と頷く。
かんぽうちゃやらハーブティーやらという苦いお茶にはそんな効果があった気がする。たぶん。なんとなく。
『あるならよい。ボーナスの悪用や試練をサボらぬよう付加の解放にはレベルを設けてある。レベルは自分以外の者にドリンクを提供することで上がる。喫茶店文化発展のためだ。特別な力のためには、努力せねばな』
「あぁ。……でも、俺、たくさんの飲み物は知らねぇ。……知らねぇと、作れねんだろ?」
かんぽうもハーブも覚えていなかった。
人選ミスをほんの僅かに眉を下げて尋ねると、声は一斉のそばに蛍のような淡い光をフワリと現れさせた。
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