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『お! 初レベルアップや!』
「レベル……どこだ」
『ドリンクバーのオプション見てみ!』
言われるがままオプションと書かれた項目を押すと、確かにドリンクバーのレベルが[2]と記されている。
ツーミンに飲み物を振舞ったからだろう。他人に振る舞うとレベルが上がると言っていた。自分で作って延々に飲み続けても意味がない。
更によく見ると、ドリンクバーのボタンのそばに[レベル2付与解放]とアナウンスが表示されていた。
どうやら、ドリンクの追加効果付与が開放されたようだ。
そういえばハーブティーやら漢方茶やら体にいいドリンクを参考にRPG風世界で役立つサブウェポンを用意してあると、グウゼンが言っていた。
『付与は疲労回復とか、体が軽なったり暑い寒いに強なったりもするで!』
「へぇ」
『街の外に出るんやったら戦闘力必須の世界やからな〜。一斉はんや一斉はんの仲間がうっかり死なんようってのもあるんや』
ドヤリと胸を張るツーミン。
エアコン代の節約になりそうだ。
なかなか便利な追加効果だがもちろん制約もありレベルアップも必要で、今は飲んだ相手が知覚できないほど僅かな効果しかつけられないらしい。
出来ることも使い方も様々あるが、攻略サイトも先駆者もいない。
全て一斉の想像力次第。
これはそういう試練。
『付与ドリンクは、作ったら一斉はんのエネルギーがちょこっと減るんや。レベル上がったらほぼ減らんくなるけど、状態異常無効とか浄化とか運気関係とか……まぁなんか強そうな付与はドッとお疲れるで!』
「お疲れんのか」
『ちなみにいっぺん作ったドリンクは、ドリンクバーメニューを開かんくっても念じるだけでシュッ! と作れんねん』
「すげぇ」
『せやろー? 他にもいろいろあるさかい、また順繰り教えたるわ!』
空のカップを嬉しげに抱いたまま浮かれるツーミンに、お礼を言う。
うまく喫茶店が開けたあともツーミンがいれば、ちゃんとマスターらしくドリンクの提供ができる気がしてきた。
『ほな、もーすぐあのおっきなジャガーさんがくるよってにワイは一斉はんの中に帰るわな』
「ジェゾ、来んのか」
『えらい嬉しそうやん』
嬉しいに決まっている。
なにも言わないが、見えないしっぽがフリフリと期待に振れる。
相変わらず思考も感情もほぼ顔に出ない低体温系ボーイの一斉は、こう見えてドの付く忠犬気質だ。
好みのタイプな上に不法投棄から助けられて治療までしてくれたジェゾへの懐き度は、これっぽっちも減っていない。
「……早く、来いよ……」
『ほんま読めへんマスターやな……ま、ええか。そういうとこも気に入った! ほな一斉はん、またな〜!』
顎にはぶつかったくせに体内へ帰る時はドップリ沈むなんて、どういう原理なのやら。
ソワソワと落ち着かない一斉に呆れたツーミンは、大事そうに抱えていた空のカップを口の中へ放り込んで一斉の胸に飛び込んだ。
そしてツーミンが消えて数秒待たず、ガチャ、と部屋のドアが開く。
「──む、イッサイ。起きたか」
「ジェゾ」
のっそりと部屋に入ってきたのは、ツーミンの予言通り、巨大モフモフジャガーさんことジェゾだった。
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