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「……俺とジェゾは、こういうこと……誘っていいカンジだったのか」 「? いけない理由がなかろうよ。己はお主の主なのだ。生前の都合から生理現象まで世話するのは当然ではないか」  もぞりと腕の中で身じろぐと、ジェゾはブランケットを手繰り寄せて一斉ごと自分に上掛けた。ふわりと暖かな空気が満ちる。 「でも、好みとかさ……俺は男だし、ツルツルしてるぜ……ジェゾよりちいせぇけど、人よりデケェよ……」 「今夜は珍しくよく喋る……ま、己はこの色で苦労した故に、触れ合う相手に殊更条件などないのだ。他人の容姿には特に寛容なつもりよ。しかしそんなことを気にするとは、お主のいた世界の民はよほど交尾の相手に困らぬのか?」 「それはわかんねぇけど……俺とセックス……交尾できても、キスは無理って人ケッコーいたな……」 「意味がわからん」 「んぶ」  ガブ、と噛みつくように唇を覆われ、ベロベロと口の中を舐めまわされた。  ジェゾは一斉とのキスが無理なジェゾではないらしい。ジェゾとのキスが無理じゃない一斉も、口いっぱい入り込む舌をペロリと舐め返す。  舌はクチュ、クチュ、と艶かしい水音を絡ませて口内を犯すと、満足げにヌルリと離れて一斉の目尻の傷をなでた。 「己はできるな。シたければ誘ってみよ。もう教えた通りにできるだろう?」 「……『俺と交尾、しようぜ』?」 「然り」 「単純明快でよい。次をシたくなったらいつでもそう誘え」と言って、よしよしと黒い短髪をかき混ぜるジェゾ。  ボサついた一斉は、ほんの微かににひ、と頬を緩めた。  ジェゾは一斉がかわいいらしい。  男でも人間でも構わなくて、一斉とのキスも無理じゃないらしい。  身投げするようなバカでもそれに人を巻き込んだ罪人でも笑い飛ばしてくれて、喫茶店のメニューも一緒に考えてくれるし、オネダリすればまた触ってくれるらしい。  一斉は恋もつぐないも、一生懸命していいらしい。  ジェゾといると、迷子の子猫だった一斉は〝生きていてもいいのだ〟と言われているような気がした。  そりゃあ当然生まれたからには誰しも生きていてもいいのだ。  わかっているが、そのわかっていることを、ジェゾのそばは自然に伝える空気がある。ブランケットの中身のようにフワリと暖かな空気がある。 「なぁ……ジェゾ……」 「ん?」 「次は、俺が、ジェゾの……ちゃんとイかせるから、よ……」  気が緩んだ一斉は、無意識にジェゾの胸に埋まり、スリスリとモフモフの胸の毛に鼻先を擦りつけた。  ジェゾがスンと黙り込む。  それには気づかず、俯きがちに緩んだ口元を隠してボソボソと勢いに任せた思いを呟く一斉。こう見えてバチバチのハイテンション。 「俺、ちょっとはやれるぜ……手とか口とか脇と、足、膝裏でもよ……なんでも言っていいぜ……だからいっぱい、やろうな……」 「…………」 「あと、さ……ジェゾも俺、誘ってくれたら……スゲェ嬉しい……かもな」  スリスリしていた鼻先を、トスン、と軽く胸板にぶつけて「かもな」と話す一斉に、ジェゾは深く息を吸い、それから細く長くフーと吐き出す。 「イッサイ」 「あ……?」 「お主もう、己以外に何も強請るな」  この日、一斉が守るべきジェゾの言いつけに、新しく〝オネダリは本能で簡潔に。ただしジェゾ以外にはするな〟が追加されたのであった。

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