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第9話

『裕介、オレとデートしよ?』  昼休みにスマホを見ると、兵士からLINEが来ていた。  前回の入れ替わりお見合いから一週間。  俺たちは、暇さえあればLINEでメッセージを交わしていた。  兵士は、幼い頃に事故で両親を亡くしていて、ずっとお祖母さんと二人暮らしだったそうだ。  高校を卒業した後、建設会社で現場作業員として働く傍ら、夜にはお祖母さんの食堂を手伝っているらしい。  俺とは何もかもが違う。住む世界も、思考も。  それが新鮮で、とても面白い。 「何がデートだよ……」 つぶやいた瞬間、後ろに人の気配を感じで振り向いた。    「誰とLINEしてるんですかあ? すっごい嬉しそうな顔してましたけど?」  「中西さん……。」  「もしかして、カノジョさんですか?」  「ちがうよ。ただの友達。」  「えー!? 本当かなあ……めっちゃニヤニヤしてましたよ?」  俺はそんなにニヤけていただろうか。  心を見抜いてくるような、中西さんの視線に、居心地の悪さを感じた。  「あ……そうだ、中西さん、ちょっと教えてほしいんだけど」  「何ですか?」  「10代の若者が好きそうなカフェとか、店とか、知らない?」  「え!? 10代の子ですか……? うーん……?新大久保の可愛いカフェとか……?」  「新大久保か……」  「……もしかして、パパ活してます?」  「パパ活!? してないしてない!  俺、まだ25だし!」  「未成年との交際は犯罪ですよ?皇さん。」  さっきまでキラキラしていた中西さんの視線が、一気に疑いの目に変わったような気がした。  「絶対違うから!……なるほど、新大久保ね! 教えてくれてありがとう!」  「ふーん……まあいいですけど……私とも今度ゴハン行ってくださいね。」  茶色の巻き髪を揺らしながら、中西さんは去っていった。  「ふー……」  いらぬ誤解が生まれてしまうところだった。  社内では余計な波風を立てたくない。  父さんに伝わると、マジで面倒なことになる。    「新大久保、カフェ……」  検索バーにポチポチと文字を打ち込んでいく。こんなに誰かと出かけることが楽しみなのは、いつぶりだろうか。  気がつけば、社員食堂には俺1人だけになっていた。

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