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第10話
「うわ〜っ、うまそ〜〜」
「お前、さっきタイ料理食べたのに、良くそんなの食えるな〜〜」
目の前に、イチゴと生クリームがたっぷりと乗せられたかき氷が運ばれてきた。
天辺には、チーズケーキが突き刺さり、練乳が大量にかけられて、滴っている。
「これ、インスタで見て、一回食べてみたかったんだよな〜〜」
兵士がスプーンでイチゴを掬って、俺の目の前に差し出した。
「ほい、あーん」
「俺はいらねーし」
「え〜〜絶対うまいのに〜〜」
「いいから、お前が全部食えよ」
「いいの!?」
「お腹壊しても知らないからな」
「……実は、さっきから、ちょっと腹いたい……」
「さっさとトイレ行ってこい」
兵士はいそいそと立ち上がると、ピンクの内装のラブリーな店内の奥へ、小走りに入って行った。
「あれ? もしかして兵士?」
後ろから声をかけられ、振り向くと、見たことの無い、チンピラ風の男が立っていた。
上下黒いジャージに金髪、サングラスをかけている。
「お前もココ来てたんだ〜。前からこういうの食べたいって言ってたもんな〜。
何?デートか?」
男は勝手に向かいに座ると、スプーンでかき氷を掬って食べ出した。
「最近『推し』ができたんだろ?
イケメンのリーマンだって言ってたじゃん。てか、兵士、髪暗くしたんだ?」
こいつは兵士の友達かなんかなのか……?
完全に俺を兵士だと思っている。
「ああ…まあね……」
「なんか今日、肌荒れてね? ちゃんと寝てんのか〜?」
「……」
俺の肌って、そんなに汚いのだろうか……。
「番号801ABXの方〜〜」
韓国人らしき店員が、配達番号を呼んだ。
「やべ。俺のだ。今、配達バイト中。
今月キツくてさ〜。じゃ、またな」
男は喋るだけ喋って、バイクに乗って去って行った。
「ふー……危なかった……」
兵士じゃないってバレたら、多分面倒臭い事になる。名前も知られたく無いし……。
「裕介……どうしよう」
兵士がフラフラしながらスマホを手に戻ってきた。
「何?どうした?」
「ばーちゃんが、倒れたって」
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