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最終話

 早朝の羽田空港は、外から差し込む黄色い朝の光で満たされていた。  窓の外には、これから俺たちが搭乗するだろう飛行機たちが、整然と並んでいる。  出発待合エリアのテレビでは、父さんが官房長官として、例の週刊誌に関する、記者からの質問に答えている場面が放送されていた。  俺たちはそれを2人で眺めながら、出発を待っていた。    「兵士は、タイに行ったことないんだろ?」  「うん。でも、昔、ばあちゃんと商店街の端っこにあった、タイ料理屋で良くご飯食べてたんだ〜。それで好きになった。」  「そうか……。俺は、卒業旅行で友達と行ったきりだなあ。めっちゃ暑いけど、飯はうまいし、楽しいと思うよ」  「マジ楽しみ〜! 裕介にガイドしてほしいな〜」  兵士の笑顔に朝日が当たって、とても綺麗だった。  「……兵士、ありがとう」  「え!?……何が?」  「いや……別に」  「え〜?照れてんの〜?」  兵士が俺の顔を覗き込んで、優しくキスをした。  「おいっ!こんなところで……」  「いいじゃん……人少ないし〜」  「そういう問題じゃ……」  その時、俺たちが搭乗する便の番号が呼ばれ、出発ゲートに来るようアナウンスが流れた。  「じゃ、行くか。」  「うん!」  俺たちは立ち上がり、どちらともなく手を繋いだ。  ずっと翼が欲しいと思っていた。どこか遠くへ飛んで行きたいと。  これからどんな未来があるかは誰にも分からないけど、今は兵士がくれた翼で、どこまでも飛んで行きたい。ずっと二人一緒に……。  

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