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第20話

「ただいま……」 「裕介……!」  兵士は俺が入ってくるなり、抱きついてきた。 「心配した……。もうここに来れないんじゃないかと思って……」 「大丈夫だよ。もう、家には戻らないから」 「裕介って、すごい人の息子だったんだなあ」  食堂のテーブルには、俺と兵士の記事が掲載された週刊春春が置いてあった。  「お前がほっぺにチューとかするからいけないんだろ!」  「まさか、週刊誌に追われてるなんて思わないし!……もう、いなくならないよね?」    兵士が急に、子犬みたいな目で俺を見つめる。  「うん。ずっと一緒にいる」  どちらからともなく近づき、キスをする。  「オレさ、中学の時のダチが、タイで会社やってて、そこで働かないかって言われたんだ」 「タイ!? 何でまた?」 「親父がタイ人なんだよ、そいつ。  ……よかったらさ、裕介も一緒に来ない?」 「え!? 俺が?」 「裕介、一応エリートじゃん。英語もできるし。絶対活躍できると思う。」 「それは……そうかもしれないけど……。  何の会社だ?」 「WEB広告とかマーケティングの会社だって。裕介と、タイでいっぱいタイ料理食いたいなー!」  兵士は俺の腕に絡みついて、体を揺さぶってきた。 「お前、タイ料理好きだな……。  まあ、どうせ日本にいても、周りもうるさいし……行ってやってもいいよ」 「そんなこと言って、嬉しいくせに……」 「うるせー!」  兵士の久し振りの満面の笑みを見て、心が温かくなった。  これから、俺と兵士の、新しい人生が始まる。

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