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「……'ll arrive on friday.っと。よし、終わり!」  中国へ商品到着日を知らせるメールをして今日の仕事を終わらせる。  時計を見ると、まだ定時を少し回ったばかりだ。この時間に帰れるなんて嬉しい。ちょうど今は比較的仕事が落ち着いている時期だからだ。これがまた繁忙時期になると、定時上がりなんて夢のまた夢になる。 「直生、終わった?」  パソコンの電源を落としているところで和明から声がかかった。 「終わったよ。もう帰る」 「そしたらさ、呑んで帰ろうぜ」  直生が落ち着いている、ということは和明も落ち着いているということで、和明から呑みの誘いが入った。もう少ししたら少し忙しくなりそうなので、行くなら今しかない。 「そうだな。行こうか」 「よし! じゃあいつものとこ行こうぜ」  直生と和明が二人でよく呑みに行くお店は、会社の近くではなく、二人が歩いて帰れるネオン街の外れだ。会社の近くで呑むのもいいのだが、その後電車に乗って帰るのが面倒くさくて、家の近くまで来てしまう。これも、二人の家が少し離れているものの散歩がてら歩くにはいい距離にあるからできることだ。  二人は会社を出ると、ネオン街に近い直生の最寄り駅まで行く。ネオン街の西の外れのその店は、どこにでもある居酒屋だけれど、料理の味が良くて二人は気に入っている。店に入ると、中生を頼み、まずは乾杯をした。 「お疲れ〜。後もう少ししたら、またちょっと忙しくなるからよろしくな」 「わかってる。帰れる今のうちに帰っておくよ」 「まぁ、よっぽどのトラブルがない限りはそこまで遅くなることはないと思うけど。もし、相手先が揉めてきたら言って。俺変わるから」 「うん。よろしく」  商品をどうするか。いつ頃発送できるかまでは営業である和明の仕事だが、その後のやりとりは直生がする。もう、フライトを決めて発送指示を出すだけなので、基本的には問題ないのだが、たまにもっと早くならないか、などとごねてくる相手先もある。そんなときは可能な限りはずらす努力はするが、あまりにもごねて問題が大きくなるは和明の仕事になる。商品の確保に関わってくるからだ。二人はそうやって仕事をしてきた。   「でさ、どうよ、その後」  和明は真っ先にそう尋ねてきた。 「どうって?」 「神宮寺さんだよ。食事行ってるんだろ」 「行ってる。行ってるけど……」 「けど、なんだよ。言え。吐いちまえ。なんだって聞くぞ」 「うん……」  和明の言葉に、言おうかどうしようか迷う。まさか男から、『口説いてる』と言われているだなんて思わないだろう。でも、事実はそうで。それを言っていいのか悩む。 「なんだよ。なんかあったのかよ」  和明はぱくぱくとお通しを食べていた手を止め、直生を見やる。

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