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第3話
「ただいまー」
リビングにいる母さんに声をかけ
早足で2階の自室に向かう
連絡を待っていると言ってくれたのが嬉しくて
部屋に入るなりスマホのロックを解除して
"無事に帰れましたか?"
と旭くんにmineを送信した
「………」
しばらく待ったが反応がない
「大丈夫、だよね…?」
妙にソワソワしてしまう
迷惑だと思われたりしてないだろうか…
そういえば、最寄り駅からどれくらい先で降りるのかも聞いてなかったな…
まだ時間がかかるのかもしれないし…
「うーん…」
返事が来たら通知音で分かるし、ずっとスマホを持ってなくてもいいのは、わかってはいるけど…
気になってしまって何も手につかない
ぼーーっ
「… まひろ〜 そろそろご飯できるわよ。」
ドアの向こうから母さんの声がしてハッと現実に戻された
「えっ
あ、うん!今行く」
画面と睨めっこしていたらいつの間にか夕飯の時間になっていたようだ
慌ててスマホをポケットに入れ部屋を出る
「あら、まだ着替えてなかったの?」
「あ、、、忘れてた」
母さんに言われて自分がまだ制服のままであることに気がついた
「匂いついちゃうかもしれないから、とりあえず着替えちゃいなさいな。」
「うん。」
先に降りて待ってるわねーと下に降りていく
「ぼーっとしすぎだなぁ」
いつもなら帰ってすぐに着替えてるのに
そんなことを考えながら、もう一度部屋に戻って制服を脱ぎ、Tシャツとスウェットズボンに着替えた
リビングに降りると母さんと兄さんが夕飯の準備をしていた
「お待たせ あれ、兄さん。おかえりなさい。帰ってたんだ」
いつのまにか帰宅していた兄さんに声をかけると、がたんっと勢いよく立ち上がり驚いた顔をされた
「か、かえって、たんだ?!?!な、何故だ??ちゃんと帰ってすぐに愛しのまひに声かけた、はず。それに、返事も、、」
「え、、そうだっけ」
「まひ?!?!」
「ごめん。考え事してた」
「そ、そう、なのか?」
何か悩み事でもあるのか?学校で嫌なことでもあったか?兄さんになんでも話していいからな!何かあったらすぐに学校に殴り込んでやるからな!!
と捲し立ててくる
うん、、知ってはいたけど、このブラコン兄さんは唐突に恐ろしいことを言い出す…
いつもぼくのことを気にかけてくれる、本当にいい兄だとは思う。が、たまに暴行するのが残念なところ
「ふふ、本当に兄弟仲良しね。
でも、確かに、部屋の外から声かけてもなかなか返事しなかったし
珍しいわよね。いつもなら夕飯の時間にはリビングにいるのに」
制服もそのままだったしねぇ、ほんとに何もないの?と母さんまで心配そうにこちらをみてきた
「あー、うん、ほんとになんでもないよ」
新しくできた友人からの連絡をまだかまだかと待ってただけなんて
そんな小さい子どもみたいな理由だとはいいにくい
「なんでもないならいいんだけどね。本当に困ってるならちゃんといいなさいよ。お兄ちゃんもまひろのことが心配なのよ」
そうだそうだ!と兄さんも言ってくる
「うん、ありがとう」
「わかっているのならそれでよろしい。
ささっじゃあ晩御飯にしましょうか。今日は唐揚げを作ったのよ。
じゃーん!たくさんできたから飽きちゃわないようにお母さんちょっと頑張りました〜」
テーブルに運ばれてきたのは見た目の違う唐揚げが3種類
シンプルな醤油唐揚げ、タルタルのかかったチキン南蛮にチリソース和え
「おぉ!!!全部美味しそう!!!」
ぐうぅぅ
「ふふっいつものまひろね」
「うん!うん!!それでこそいつもの食いしん坊まひだ!」
「2人ともどこで判断してるんだよ!」
「「お腹の音かしら(かな)」」
美味しそうなものがあったら反応しちゃうんだよ!
ぶすくれていたらお尻のポケットから
ピロンッと新着メッセージの通知音がした
「っ!」
取り出して画面を見ると
旭くんの名前が通知画面に表示されている
"無事に帰れた。返事遅くなってすまん。"
返事と一緒にクロクマのキャラクターがごめんなさいと頭を下げているスタンプが届いていた
返事きた…よかった
にしても、ふふっ、スタンプ可愛いなぁ
さっきまでぶすっとふくらんでいた頬が緩んでいきそうになる
"無事、帰れたようでよかったです"
とすぐに返信する
「あ…」
顔を上げると
それはそれはもうニヤニヤとしている母さんと
絶望顔をしている兄さん
「あらあらあらあらあらあらーまひろもしかして?」
「…まひ、まさか、、彼女か?!?!彼女なのか?!?!?!」
ガバッと思いっきり肩を掴まれる
「はぁ?!?!ちっ!違うよ!ただの友達だって!!!」
「ほんとか?ほんとなんだな?!?!彼女じゃないんだな?!?!」
「ほんとにほんと!!それに相手男子だから!」
「あらっ別に男の子でもいいじゃない。好きになった人がまひろの運命の人なのよ。」
ほほほ〜と笑っている母さん
それに対して兄さんはというとわなわなと震えて…
「まひの、うん、、めい、、おとこ、、、こい、、びと」
「ちょっと母さん!ややこしくしないでよ!!」
咎められても変わらずふふふ〜と嬉しそうに笑っている母さんと
ぶつぶつと同じ言葉を繰り返し頭を抱え出した兄さん
「もう…本当に友達なんだってば」
それに、今日知り合ったばかりだし、旭くんは確かに優しくてかっこいいなとは思うけど…
「まひ!!」
バッと顔を上げた兄さんが真顔で肩を掴んできた
「ちょっ、なに?急に大声出さないでよ」
「もし、もしものもしも、だけど、万が一、お付き合いするならまずは兄さんに紹介しなさい、まひにふさわしいかどうか尋問もとい面談します。」
「は??」
ちょっと!今尋問って言ったよこのブラコン兄さん!しかもなんか目が座ってるし
「はいはーい!母さんもあってみたいわ〜まひろの運命の人」
こっちはこっちで楽しんでるし…
呆れているとピロンッとまた通知音
返事が来ていることに気がついた2人が揃って画面を覗こうとしてくる
「ふふ、どんなやりとりしてるのかしら〜?」
「もしも、変なやつだったら…許さん…」
「もー!2人とも!やめてよ!」
画面をサッと隠してポケットにしまう。
「ほら!早くご飯食べよう!お腹すいた!」
ガチャッ
「ただいまー 帰ったぞー。
玄関の方まで声が聞こえてたけど何かあったのか?」
父さんが帰ってきたようでリビングに入ってきた
なんだなんだ?なんの話してたんだ?と不思議そうにしている
「そうなのよ!パパ!聞いてちょうだい!まひろにね 気になる人ができたみたいなの!」
きゃーっと母さんが嬉しそうに話し出した
「ちょっと母さん!
ただの男友達だから、そういうのじゃないって!!
父さんも真に受けなくていいからね」
「ほう。そりゃめでたいな。まひろも別に恥ずかしがることじゃないぞ。年頃なんだからな。ハッハッハッ」
「父さんまで… 人の話聞いてないし
はぁぁぁ…」
もうやだ…この暴走家族。止められない、止まらない…
もういいや、ご飯食べよ。
諦めて椅子に腰掛けいただきますと手を合わせて唐揚げを一つ頬張る
「うん。美味しい」
なにやら三人が運命の人だ、男の子だなんだと盛り上がっている
「はぁ」
しばらくこの人たちの前でスマホ出すのはやめとこう
佐倉 拓弥
佐倉家 長男
ブラコン 重度
20歳 大学生
佐倉 真由美
佐倉家 母
料理上手 色々とおおらか
46歳 主婦
佐倉 進
佐倉家 父
家族大好き 家族の幸せが自分の幸せ
45歳 サラリーマン
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